第12話 ご褒美と透子登場
和樹のことを好きだと観月は言った。
観月は言い終わると、恥ずかしそうに、かあっと顔を赤らめた。そして、抱きついた手を放し、和樹から一歩離れる。
「本当はこんな形で言うつもりはなかったんです」
「えっと、言わせてしまってごめん」
「あ、謝らないでください。妹が兄を好きになるなんて、変だって思うかもしれません。でも、仕方ないじゃないですか……好きになっちゃったんですから」
「変だなんて思わないよ」
和樹だって、観月を異性として見てしまっていた。だから、観月が和樹のことを好きになっても、おかしいだなんて思わない。
むしろ観月みたいな良い子が和樹のことを好きになってくれたなら、それは本当に嬉しいことだ。
観月は少し安心したようにうなずき、うつむく。
「兄さんがそう言ってくれて嬉しいです。でも、すぐには返事はいりません。ただ……これからもわたしの兄さんでいてください。それがわたしの望みですから」
「もちろん俺は観月の兄だよ。それは変わらない。ずっと」
「ありがとうございます。では、一緒にお風呂に入ってくれますか?」
「そ、それは……」
「わ、わたしが勇気を出したんです。少しはご褒美をください」
甘えるように観月は言う。
「婚約者のフリはするけれど、一緒にお風呂は……」
「ダメって言っても、無理やり一緒に入りますから」
観月はそう言うと、キャミソールを勢いよく脱いでしまった。
上半身は純白のブラジャーのみの美少女は恥じらいながら和樹を見つめていた。
形の良い15歳にしては大きめの胸が、和樹の視線にさらされている。
観月もその視線に気づいたらしい。
「妹に欲情するなんて、兄さんは変態ですね」
「観月がそうさせたんだよ」
「そうですね。わたしは悪い子ですから。お仕置きしてくれてもいいんですよ」
観月がちょっと楽しそうに言う。
(お仕置きって……)
観月にいろいろするところを想像してしまい、頬が熱くなるのを感じた。
観月もわかっていて言っているんだろう。
「胸とか……触ってみます?」
観月は顔を赤くして、両手で自分の胸を両側から押し上げた。豊かな胸が観月の手で形を変え、谷間をより強調する。
「触ったりなんてするわけないよ!」
「でも、兄さん……わたしの胸に目が釘付けですし……」
「ご、ごめん」
「いいんです。むしろ兄さんがわたしに興味を持ってくれているなら、嬉しいですから。お、襲ってくれてもいいんですよ? 兄さんはわたしのもので……わたしは兄さんのものですから」
「そんなわけにはいかないよ」
「わたしが兄さんの子供を生めば、祝園寺の家の問題だって解決しますし」
透子との会話でも話題に上がったとおり、それはそのとおりだ。
たしかにそうすれば、祝園寺家の後継者問題は解決する。
霊力の多い観月の子供なら、次代の魔術師となれる可能性が高いからだ。
ただ、仮にそうするとしても、それは遠い未来の話だ。今は和樹は16歳で、観月は15歳の少女なのだから。
それに、そもそも観月はそんなことを考えなくていい。
和樹はぽんと観月の頭に触れた。観月はびっくりした表情で、恥ずかしそうにうつむいた。
「……兄さん?」
「観月がそんなことをする必要はないよ」
「で、でも……わたしはそのために祝園寺の娘になったんです。優秀な魔術師の子供を生むために誰かに嫁ぐっていう役目があって……」
「そんなのは祝園寺の勝手な言い分だ。観月が従う必要はない。第一、うちはもう没落気味だし、無理して支える必要もないさ」
「そ、そんなことありません……」
言葉に詰まる観月の髪を軽く撫でると、和樹は微笑んだ。
「観月は俺の大事な家族だよ。魔術師の子供を生むとか、そんなことのために、俺の妹になったわけじゃない」
「透子さんの前でも言いましたけど、義務だからするんじゃないんです。わたしが……兄さんとけ、結婚したいから、そんなことを言ったんです」
観月はうつむくと、小声でささやく。
和樹はどう答えたものか迷った。
観月の好意に、自分は応えられるのだろうか?
異性としての観月のことをちゃんと見て、観月を守ることができるか、和樹は自信がなかった。
ただ、目の前で白い肌を見せて、頬を赤くして、自分は和樹のものだという美少女を……和樹がただの妹として見ることは、もう不可能かもしれない。
手を伸ばせば、観月の身体を自分のものにできる。観月の言う通り胸を触ることも、それ以上のこともできてしまう。
そして、そうしても、観月は和樹のことを許すだろうし、むしろ喜ぶだろう。誘惑を感じないと言えば、嘘になる。
だが、同時に和樹は観月のことを妹として大事にしたかった。
和樹の葛藤を中断させたのは、扉の向こうの廊下からする足音だった。
和樹と観月は顔を見合わせる。この家に他に家族は、父だけだ。だが、父は今日は仕事で帰ってこない。
ただ、合鍵を持っている人間がいる。将来は家族になる予定だった人間、同じ七華族の家の人間だ。
「和樹、いないの?」
綺麗な声で、少し寂しそうに和樹の名前を呼んだのは、東三条透子だった。
<あとがき>
透子ふたたび……!
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