かくれんぼ(Aパート)


「もういいかーい?」と聞いたら、

「まあだだよー」と返ってきた。


 ボクたちは、ようせいだ。

 

「もういいかーい?」ともう一度聞いたら、

「もういいよー」と返ってきた。


 ボクたちは、かくれんぼをしている。

 おには、もちろんボクだ。


 すぐにリッくんが隠れていそうな場所を探す。


「どこかなー。リッくんのベッドの下かな?」

「ちがうよー」


 ボクたちは、ようせいだ。

 だから、どんなにせまいところにだって、スルリとかくれることができる。


「じゃあ、ルカちゃんのマクラの下だ!」

「ちがうよー」


 天井のスミ、柱のカゲ、ドアの隙間と、次々に候補をあげていくものの、どれも「ちがうよー」と言われてしまう。


 まいった。

 ぜんぜん見つけられないや。

 こういうときは……。


「ヒント、なにかヒントをちょーだい!」


 ボクはリッくんにヒントをおねだりしてみた。


「えー、しかたないなあ。ここはねぇ、あたたかいところだよ」


 リッくんは少しだけもったいぶって、しっかりヒントをおしえてくれた。リッくんはとてもやさしいんだ。


 あたたかいところ、あたたかいところ。

 ボクはいっしょうけんめい、あたたかいところをさがした。


 まどの方を見たら、ルカちゃんのベッドが目にはいった。ルカちゃんは、いつものように本をよんでいるみたいだ。


 ボクはピンときた。 


「あっ! わかった! ルカちゃんのふくの中でしょ!」

「ちょっ、そんなわけないじゃん! えっち! ショウくんのえっち!」


 あれれ。ちがったみたい。


 ボクはあたたかそうなところを、思いつくままに口にした。


「ボクのふとんの中?」

「ちがうよー」

「リッくんのふとんの中?」

「ちがうよー。ルカちゃんのふとんの中でもないからね」


 つぎに言うつもりだったのに、さきに言われてしまった。

 もしかすると、リッくんはちょーのーりょくがあるのかもしれない。


 ほかに、あたたかいところってどこだろう?


 そのとき、まどからフワリと風がはいってきた。

 カーテンがヒラヒラとおどって、外からまぶしいほどの光がさしこんだ。


 おひさまの光はポカポカとあたたかい。

 …………あっ!


「わかったぞ。カーテンのむこう、まどのわくのところでしょ」

「あったりー!」

「やったああああ!!」


 ヒントはもらったけど、ちゃんとリッくんを見つけることができた。

 ぼくはこころの中で、大きく、大きくガッツポーズをした。


「じゃあ、つぎはショウくんがかくれてね」

「うん。まかせて!」


 さあ。どこにかくれようか。

 ボクがキョロキョロしていると、リッくんが思いだしたように言った。


「あっ! えっちなところはダメだからね」

「え? えっちなところって?」

「それは、その……。ふくの中とか、パンツの中とか、そういうところ……だよ」

「ええええええ!? なんでぇ!?」


 ちょうどパンツの中にかくれようと思っていたのに。やっぱりリッくんはちょーのーりょくがつかえるのかも。


 しかたがないから、ほかのところをさがすことにした。


「もういいかーい?」

「まあだだよー」


 ボクたちは、ようせいだ。

 だから、どんなところにだって、かくれることができる。

 

「もういいかーい?」

「もういいよー」


 さあ、ボクがかくれているところが、リッくんにわかるかな?




          【Aパート 了】

 

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