第25話 かけがえのない絆

 車窓の外に過ぎていく風景が、草原から民家そしてビルへ変わっていく。次第にその変化はゆっくりになり、四角い窓枠の中でコンクリートのホームが線を引き始めた。

 網棚の上から鞄を下ろし、上着を整える。

 夜行列車の旅を終えるときいつも、少女はあの旅の始まりを思い出す。


 眩い光に色づいた金色の葉っぱが少女を誘う。

 森を抜けた先に見えた、天に聳え立つ美しい時計塔。

 星辰の下を走り抜けた、月明かりわずかな夜。

 そして目の前に広がる、禍々しくも信じられないほど美しい光景。


 ポケットにそっと手を入れると、滑らかな面に指が触れた。


 あの旅のことは、きっと誰に話しても信じてはくれないだろう。

 けれども少女の胸の内にはずっと生き続けている。秋の彩り豊かなシレア国王都シューザリーンの街並みはいつでも脳裏に描き出せる。

 街の活気と、城の人々のこと。

 そして弾けるような笑顔と輝く橙の瞳を持つ、誇り高く、どこか脆くてとても優しい王女のことを。


 窓から入り込む朝日が眩しい。

 羅針盤は、あの時から全く変わらず、まっすぐに北を指していた。

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