第19話 城の侍女たち

 朝早く、城の中を走り回る衛士や官吏の中に、ほとんど駆け足になることはないが高速で廊下を行く人々がある。

「その茶器は急いで大臣のところへ。そろそろお休みをいれなければいけません」

「姫さまと殿下の服をそれぞれお洗濯へ。今日は早くに日がかげるから急いで」

 口々に連絡を交わし合うが、常に速歩である。

「女は淑やかに、美しい所作で、決して慌てず」

 代々叩き込まれる侍女の心得は主君から言われたことではない。彼女たちの矜持なのだ。

 しかし。

「はぁーっつっかれたああ」

 休憩場に行って腰を下ろせば、途端に姿勢は崩れ机に突っ伏す。そこへ王女付き侍女が通りかかり、慌てて姿勢を直そうとする。

「あ、う、そ、ソナーレさんっ」

 疲弊し切ってうまく体が動かず、叱責がくるかと侍女は肝を冷やした。

 ところが。

「ほら、蜜入りのお茶飲んで一息つきましょう。そんなに無理していたら姫様が心配なさるわよ」

 湯気の上がる茶器から甘い香りがする。侍女は調理場からの差し入れ菓子と共に、にっこり微笑んだ。


 ***

 ソナーレさんは厳しいですが優しいお姉さんです。

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