第18話 補充

「それでは明朝、七時には市門を出られるように衛士に通達を」

 次期王位後継者の一人である兄王子は、定期的に王都から離れた地域の巡察に向かう。今季ももうそんな時期だった。

「厩舎の方にも連絡を入れておきます。それから手持ちの食事を調理場に……うわっ」

 従者が予定表を見ながら確認していたところ、突然目の前の王子の上体がぶれた。何かぶつかってきたらしい。

「どうした?」

 当の本人は全く動じず振り返る。

 王女は兄の背中に額を当て、返事の代わりにさらに強く抱きしめる。

「大丈夫、なるべく早くに帰るから」

 一度に数カ所を回ってしまった方が効率がいい。今回は十日の日程である。

「それでも長いわ」

 妹は十八とはいえまだまだ父母が去った城では心細いのだろう。

「その分、お兄様を補充します」


 ***


 動じろよ、という従者の突っ込みは無意味なので言うのをやめました。定期的にお兄様パワーをチャージします。

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