第17話 調理場の昼過ぎ

 昼飯の片付けが済めば調理場にも一時の休息が訪れる。夕飯の下拵えが始まるまで、それぞれ仮眠を取ったり街に出掛けたり、厨房を離れて自由に過ごして良い。

「なあ、この間焼き菓子作っただろう」

「ああ、花の蜜を使ったってやつ?」

 しかし残らずとも良いのに、若い料理人は大抵作業台の前から動かない。

「あれ、姫様と殿下はいつもながら喜んでくれたけど、反応がまあちょっと欲しいわけ。何が足りないと思う?」

「足りない、というより足しすぎじゃないか? 粉の配合多いとか」

「あ、確かに固めだった」

「水分増やせよ」

「よし、やってみるか」

 飽くなき探究心。

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