第15話 お勉強

 図書室の窓に近い一角は、ちょうどよく座席の位置に陽だまりができ、机上は影になって本が読みやすい。お気に入りのその席に座ると、王女は代々王族に受け継がれてきた歴史書を開いた。

 次期為政者の一人たる王女もそれなりに忙しい。午前中は日替わりで歴史、礼法、数物理学、経済学諸々の授業に充てられ、復習や自主学習時間も確保している。

「先生の講義を黙って聞いているよりも読んでしまった方が早いのよね」

 大臣には年寄りの話から得るものもあるのだと言われて授業を受けているが、こうして自分でゆっくり学ぶ時間の方が好きである。

 次の時代の国政はどうだっただろうか。ところどころ傷ができた古びた紙をゆっくり捲る。すると、王女の唇が無意識に笑みの形になった。

「まぁたこんなところに」

 新しい頁の余白に書き込まれた文字は、別の書物への参照を示していたり、今の時代の状況だったり。知らない手記もあったけれど、よく知っている文字もたくさんあった。一部は父と母のものだ。

「お兄さまも、よく似てるわね」

 ちょうど現在課題になっている事案と関連する記述の横に兄の几帳面な筆跡を見つけて面白くなってしまう。

 ——私も。

 こうして歴史は紡がれる。

 王女は兄の続きにインクを足していった。



***


 真面目に聞け、と言いたくなるところでしょうが、授業の成績や態度が良いかと、良政をとるかどうかは別物です。

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