第14話 鍛錬
鋭く空気を切る音の直後、訓練場に破裂音が響き渡る。
的の中心に刺さった矢は、振れることなく地面と並行に静止した。
弓を下ろし、王子は矢筒から新たな一本を引き出す。
——速度がまだ甘いな。
当ててもそれだけでは不十分だ。実戦で動く標的を前にしたとき、同じ速さで果たして当たるかどうか。
もう一度弓弦に矢を当て、引き絞る。訓練場を照らすのは、僅かな灯火の他は月と星明かりだけだ。
上空をたなびく一筋の雲が、月の姿を隠した。煌々たる白光の中にあった的が影に隠れる。
その瞬間に、矢が手を離れた。数秒もなくパァンと高い音が立つ。
——あと十本。
厳しい条件の中でどれほど命中させられるか。戦など決して起こしたくはない。だからこそ事を未然に防ぐには、日々怠ることなく。
再び姿を現した月が、的に刺さる矢を浮かび上がらせた。
***
弓はたまにではあれ、鈍らないよう定期的に夜の鍛錬です。
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