第12話 あたしも

「兄さんたちずるい!」

 青年たちが真新しい書物を広げている最中、扉の外では少女が腰に手を当てて仁王立ちしていた。

「自分たちが静かに読みたいからってあたしに見張り任せるなんて! あたしだって一緒に難しい本、読みたいのに」

 眉を吊り上げて戸に向かって抗議するが、肝心の返事はない。少女はむぅとむくれて頬を膨らませると、左手に抱えていた本を目の高さまで上げる。

「おまけにあたしにはこんな子供だまし?」

 分厚い板でできた表紙には、題字が飾り文字で彫られている。めくってみると銅版の挿画が章の冒頭にあった。羽を持つ妖精の絵だ。

「きっとあたしには学術書なんてわからないって思ってるんだわ。失礼しちゃう。こんな子供だまし……」

 扉の前に座り込み、少女は膝の上に本を開いて置いた。


 その後小一時間、青年たちが出てくるまで、少女はその場を動かなかった。


 ***


 夢中で読みました。

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