第10話 天然

「ねえお兄様っていつ休んでいらっしゃるの?」

 兄王子は朝早くから起き出し、会議前に執務室で雑務を済ませ、会議に出てから公務を始める。夜は夜で夕飯後も執務室か自室かで書類と向き合っている様子である。

「一体いつ休んでいるのか分からないのよ。お体心配でしょう? ねぇってば」

「知りませんよこっちが聞きたいですよ」

 話に付き合わされている方こそそれが懸念材料なのだが、仕事を減らそうにもいつも先回りされてしまうのだ。

「姫様こそ隙あらば殿下のところ行こうとするでしょう」

「何その言い方。ロスの方がお兄様独り占めしてるくせに」

「してません。断じてしてません。誤解と風評被害ですってば」  

「いいえ正解と事実だわ」

 次第に語調が荒くなる二人の会話に、がちゃりと取っ手の回る音が割り込む。

「喧嘩に見えても仲が良いな、二人とも」

 振り返ればことの発端が涼しい顔で立っている。

「城の中でこういう光景を見ると安心するよ。感謝する」

 そして王子のこの振る舞いが、王子本人に追究する気を無くさせるのも確かである。当人には全く自覚がないが。

 どこへ行っていたのやら。


 ***


 ほのぼのの源。

 殿下の行動は謎が多い、かもしれない。

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