第3話 大臣執務室
若い為政者二人を補佐し、政務を滞りなく運ぶのは大臣がいてこそである。彼は老齢にして深夜二時まで書類と向き合う。
朝一番に会議室を解錠するのも大臣の務め。羽織を肩にかけ、早朝の廊下を闊歩する。窓から見える庭の噴水が飛沫を上げ、光る水面に落ちていく。なんとも清々しく、新しい一日にふさわしい。
「今日も良い天気ですな。朝の庭は気持ちが新たになりますな」
我知らず独り言も漏れるくらい、いい朝だ。
「む?」
いい朝、なのだが。
「あぁっ! 姫様っ!」
裏庭の方から駆けてくる少女は、侍女服であれ見間違いようがない。長い髪を靡かせ軽妙な足取りは。
「この間しっかり叱ったつもりが! まったく仕方のない……」
羽織を翻し、大急ぎで階段へ取って返す。街に出るなと今度こそ厳しく言っておかねば。
その直後、兄王子が庭を突っ切ったのを、大臣は見ていない。
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