第2話 調理場
一日働き詰めになる城の主人二人が、束の間の休憩のために朝起きるとき、城の下層では調理場の面々が主人以下、皆の身体を支えるために早朝から動き始める。
料理こそ肉体労働にして精神労働。舌だけでなく五感全てを満たす食事を作るのは心身を酷使する活動だ。強気怖いものなしの料理長も、老齢の身で疲れ知らずというわけにはいかない。
だが厨房を守る者として、休むことなど許されまい。今朝も日の出前から石段を下っていく。
「おはようございます料理長! 粉袋、地下倉庫から補充しておきました」
「料理長、根菜の下拵えは済んでますから今日のスープの味決めてください」
「料理長ちゃんと寝たんですか? タレの塩加減、確認もらうのに寝ぼけてちゃ困りますからね」
扉を開けた途端に若衆の活気のある声が飛んでくる。見渡せば、力仕事や些末な作業は全て綺麗に終わっている。
「こわっぱどもめが生意気な……自分らのこしらえた野菜と肉の火入れ加減教えとくからよう見とけよ」
了解! と返事は歯切れ良い。黙って上を支えるのが下っ端の務めであり、巨匠へ示す敬意である。
***
シレア王城、調理場の朝。
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