第二話自由闊達とは行かない旅路⑥


光明街の外れには森林があり、そこから進むと集落めいた道路がある、両側に川があり、その両側の川より女天狗がやって来た。


お互いに真っ赤な天狗の仮面をつけている。


片方は貧乳、青いメッシュをしている。


片方は巨乳、白髪をしているのである。


そこに闇削刑無はやって来た。


「何奴!?」


貧乳、青いメッシュをした女天狗が叫ぶ。


巨乳、白髪をしている方は沈黙している。


「ここより先、何がある?」


それに巨乳、白髪をしているの女天狗が言う。


鬼船神社きふねじんじゃよ」


滝夜叉姫、天慶の乱にて父将門が討たれ、一族郎党は滅ぼされるが、生き残った五月姫は怨念を募らせ、貴船明神の社に丑三つ時に参るようになった。満願の二十一夜目には貴船明神の荒御霊の声が聞こえ、五月姫は妖術を授けられ、滝夜叉姫となった。


それは架空の和風の呪われた姫君である。


父親が死んだのならば復讐の念を抱いても不思議ではないという殺伐とした家長制度だ、本当はただ父親を弔い尼になっただけだ。


そういう思いは邪見という偏見に繋がり、そして、それは原型となり、一人の女性の波長に合うような悪霊となってしまうのだ。


その神社では二人の大和撫子の女性二人が嫁いでいた、同性愛結婚という物である。


寛容がかなり高くないと実装されない。


そこの奥地にある船、本当に鬼を船首にした巨大な屋形船が置いてあったのだ。


寿司、違う、刺身料理では舟盛りというのがる、この船に乗った鬼女は何人だろう。


神社でお参りする時、お願い事とは秘匿シークレットだが、たった一つの思いに対して、ただ希望に満ちた、光のためのお願いというのはあり得ない、そのお願い事一つまでに辿った人生、経歴、前歴、前科、そういうのが裏目に出るかもしれない。


秘めた言霊には条件反射、刺激は恐怖に移るのかもしれない、様々な情念、正念、邪念、そういうのが一つの言語ミームとして成り立つ。


お金持ちになりたいと伏見稲荷神社でお願い事をしたとしてその思いは一色ではない。


日本各地の稲荷神社、豊川稲荷だろうとそれは変わらないと思ってしまう。


だが、滝夜叉姫を玉藻前と結びつける文献には心当たりがない、時代が少しずれている、それでもなお、二人の女天狗は違う。


この鬼船神社の鏡像として暗馬くらま寺とは左右両方にあるようになってしまう。


しかし、闇削刑無はこの二人を歓迎した。


「今殺されるのと今度殺されるのとどっちがいいと思う?後者がいいと思うけど?」


それに二人は怯えながら頷いた。


二人は彼のパーティーメンバーに加わる。


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