第二話自由闊達とは行かない旅路⑤


市役所の人間の大半は女性だった。


そして、市長の鶴の一声で移住はあっさりと許可された。


「さぁ、これでどうかしら?」


それに白原薫龍は前よりマシとは思った。


住所についてもしっかり定められた、一軒家はありきたりな一戸建てであった。


ホテル暮らしも長くは続かず、やはり、新しい住居を求めるしか無くなるだろう。


だが、闇削刑無はこの場にはいない。


住民票とは土地に縛るための縛りである。


それによって住所が定まれば郵便番号、そしてその家の電話番号も定まってしまう。


つまり市長に生殺与奪の権利をしっかり握られているも同然である。


しかし、同時にそれは幸いにも安全を保証する、就活するにしても住所は大切だ。


それがないとホームレスからの脱却すらも難しい。


清瀬光己はその条件を全て鵜呑みした。


ここで彼への拒否権はない。


アイリッシュ・コーヒーもまた否定しない。


女尊男卑社会の一つの完成形であるこの歪んだ暗黒街と対となるだろう光明の街。


それは画期的で活気づけられる事も多い。


市役所の市議会の大半も女性だろう。


フェミニズムの究極の飽和点。


フェミニズムとは、性差別をなくし、性差別による不当な扱いや不利益を解消しようとする思想や運動のことである。 フェミニズムはその歴史から女性権利向上・女性尊重の運動だと捉えられがちだが、男性嫌悪や女性だけを支持するものではなく、男女両方の平等な権利を訴える運動である。


4つの波、現代の西洋のフェミニスト運動は、4つの波に分けられる、第1の波は、19世紀から20世紀初頭の女性参政権運動であり、女性の投票権を促進した。第2の波である女性解放運動、ウーマン・リブ運動は、1960年代に始まり、女性の法的な平等と社会的な平等を求めるキャンペーンが行われた。1992年頃には、個性と多様性に焦点を当てることを特徴とする第3の波が見られた。さらに、2012年頃から第4の波が始まったと考える人もいる。第四波フェミニズムは、ソーシャルメディアを利用してセクシャルハラスメント、女性に対する暴力、レイプ文化などと戦うもので、最も有名なのがMe Too運動である。


これがもしかしたら新時代の五つ目の波だ。


市長の名前がまだ名乗られていない。


彼女は市役所の市長の部屋の自分の机の椅子に座り、こう名乗る事にしたのである。


羅刹国塚義子らせつこくづかよしこよ」


鬼塚どころか羅刹国塚と名乗ったのだ。


羅刹国は三蔵法師が伝えし鬼女の女ヶ島にょがしま、羅刹国は、三蔵法師の著作『大唐西域記』に言及された羅刹女の国である。後に近世以前の日本人は日本の南方もしくは東方に存在すると信じていた。それを冠した。

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