第二話自由闊達とは行かない旅路⑦


闇削刑無の目的は一つ、他者の意見を全て蔑ろにしての、闇深い市長の処刑である。


「さて、名前は秘匿するのが常でしょうが、一応、聞いておきましょう」


幻子げんこ


と、白髪の女天狗が名乗る。


真音しんね


と、青髪メッシュが名乗る。


真音は老人に話しかける。


「なんていうか、前に会ったような‥‥」


それに老人の眼光が鋭くなる。


「つまり、戦争犯罪を犯したと?」


戦争犯罪、米軍が世界の警察と言われていようが戦争犯罪は戦争犯罪であり、私刑は私刑、虐殺は虐殺、という確定事項だ。


「いや、そんなとこ興味ないわ」


真音はそれについては否定した。


「フフフ、男はいつも戦闘バトルについて考える、その果てが戦争です、馬鹿馬鹿しい、殺人が戦争ならば許されるとは到底思えません、北欧神話の戦争の神オーディンなどその肉の一片まで滅したいと思う、戦争というのは様々な形で行われてきた、人類史とは戦争の歴史、暴力の歴史、暴力をやめた方が良い、そういう発想は女々しい、しかし、強くなければ国は守れない、しかしだ、やはりシベリア抑留というのからして、というかシベリア抑留って何でした?ふむ、認知症か」


それに幻子は彼を無視しようとした。


「ふむ、戦争、戦争、戦争、そういうのが目に映るだけで嫌ですな、という言葉だってあるな」


クラインはシカゴ学派 (経済学) のミルトン・フリードマンを批判した。フリードマンはケインズ主義に反対して「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」と述べるなど徹底した市場原理主義を主張したが、クラインはこうした主張を「ショック・ドクトリン」と呼び、現代の最も危険な思想とみなしている。そして、近年の悪名高い人権侵害は、反民主主義的な体制による残虐行為と見るばかりでなく、民衆を震え上がらせて抵抗力を奪うために綿密に計画され、急進的な市場主義改革を強行するために利用されてきた側面に注目すべきと説く。


政変・戦争・災害などの危機的状態を挙げ、「惨事便乗型資本主義」(「惨事活用資本主義」、「災害資本主義」、「火事場泥棒資本主義」)はこれにつけこんで、人々がショック状態や茫然自失状態から自分を取り戻し社会・生活を復興させる前に、過激なまでの市場原理主義を導入し、経済改革や利益追求に猛進してきた、という。


「傷は抉る事が教育となる、痛み、体罰、そういうのはとても私の思想の原点にある」


と、闇削刑無はにやりと笑った。


それに真音はなんだかうんざりしていた。


「‥‥‥心理実験なら倫理審査を通さないといけないんじゃなかったかしら?」


それは当然の疑問点である。


それに闇削刑無はどこまでも歪なまでに深淵よりも暗い両目をして、無機質に答える。


「そんなの意味のない無駄話にしかならない、人間観察の真髄が失われる」


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