第一話始まりは終わりと同じ⑧


清瀬光己は懐から小瓶を取り出した、それを清瀬邪喰の手元まで運び握らせた。


「俺は幼少期、肺病が複数あった、肺炎しかり、それでな、臨死を早く体感すると人とは違った生き様を会得したくなる、折角、特別に神か何かに救われたとも思っている、そんな俺が非凡な生涯を送らないと意味がないと思う、しかし完治はしない、呪禁道とは単なる封印術で治癒魔術ではないからな、まぁそれは自分の中の毒、極毒デスのワクチンだ」


死神は西洋社会ではトランプのJOKERの道化師の位置にも同じとされて、大鎌を持つ道化師としても死神は表される、西洋の占いのタロットカードと呼ばれるもののアルカナの13番目であり、終焉を良くも悪くも暗示させる、ローマ神話の死神、プルートー或いはプルトンは農耕神であるともされて、それらは死の化身であり、死への導き手である。


タナトス、ヒュプノス、プロセルピナ、ハーデス、そういうのがギリシャ神話で有名であり、それらは死の神格化とされた。


日本ではイザナミがいて、三代目の根の国という冥界の王はスサノオであるとされる、妖怪としての和風の死神は自殺が多発する空間に出没するらしい、中南米には完全なる善の爬虫類神イツァツナーと対となるア・プチ、悪賢く蝙蝠の化身もあるとされる闇深き梟の化身ミクトランテクートリというのもいる、あの世を司り、そして、地獄というのを司るならば閻魔大王というのだっている。


死神を克服する猛気を持てば生き延びる、中国においてはそのような習わしもある。


生命への衝動、リビドーがあった。


それはタナトスの対極、エロスでもある。


しかし、ワクチンはまた違う話だろう。


アイリッシュ・コーヒーは何かを悟った。


「光己、君の光明は酷く錆びている、鈍っている、それはあからさまに暗澹である」


戦いの最中にアイリッシュ・コーヒーは自称、暗獄寺終音こと清瀬光己に言い放つ、それはある意味では正解であった。


「不敬と不服という二文字は結びつく、まぁ、だからと言って真意をそのまんま教える事は出来ないが、今は置いておこう」


闇削刑無もまた戦いの最中に暗獄寺終音こと清瀬光己にこんな事を言うことにした。


「‥‥‥‥不問には出来ないが、まぁ、我々の大望としてはそれは悪手ではないだろう」


アイリッシュ・コーヒーはその態度に不満を持ってしまうが、やる気は削がれない。


「とりあえず、この男の身柄は貴方を倒さないと手に入らないようですなぁ」


お互いがお互いの老骨に鞭を打ちながら攻防はより続こうとして加速を相乗効果する。


清瀬邪喰はワクチンを懐に一応はしまって、清瀬光己に対して攻撃の構えをとる。


左手をより前に出し、右手を上に添えるようにする、空手のようで、少し違った。


「まぁ、これはありがたくもらっておくが、兄貴の存在意義を正さないといけない」


清瀬邪喰は光速に到達して殴りかかった。


しかし、清瀬光己もまた光速となって、その攻撃を受け止める事となってしまった。


「さて、今、凶器無しの素手喧嘩ステゴロが出来ることを光栄と思うこととしよう」


闇が溢れ出る、闘争本能は漆黒だった。


暗獄寺終音が求めた物。


今の人生の不満を昇華させる二文字。


それはあらゆる創作物、アニメや小説、漫画、映画に度々ある死闘しとうであった。


それは一般人である事に終止符をうつ。





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