第一話始まりは終わりと同じ⑥


その道路はもはや水流により一つの川のようになっていた、普遍的無意識の海、というが、普遍的無意識の川、とも言えよう。


歩き、走る、それが地面の龍脈を刺激する、そして、あらゆる言霊ことだまもまた沈殿する。


しかし、それは虚数空間的であり、実数空間の、うつつの水は多見による物だ。


「‥‥‥龍殺しはドラゴンスレイヤーというのね、RPGのファンタジーならカッコいいけど、これって何か、問題視されない?」


青田刈死導はそれを疑問視ても夜の闇より黒い錫杖を影から現出させていった。


「まぁ、終音様の敵なら倒さなきゃ」


と、投げ槍に攻撃を開始する、その重さ、その固さは並みの鉄パイプや金属バットではない、金剛石すら砕く破壊力があるだろう。


「じゃあ、倒されないようにしないと」


多見は振り下ろされる鈍器をかわした。


「セイッ!」


そして、右手で空手の正拳突きを当てた。


それを食らえど、青田刈死導は倒れない、痛覚を失っているわけではないがそのダメージという概念に興味がないように見える。


鬼童正道は一度、あっさりと負ける。


白原薫龍の左足の飛び膝蹴りである。


白翼翔聖光蹴シャイニングレッグ!」


それにより、顔面の鼻が潰れていく、そして、顔面に力強い衝撃が与えられた。


それにより鬼童正道は倒れるしかない、背中にはガラス片がとことん突き刺さった。


「じゃあ、次は俺の番か」


暗獄寺終音が立ち上がり彼女に向かう。


そして、平手打ちをして、その直後、世界が歪む、それは柔道の初歩的な当て身であり、それによって、倒されてしまった。


白原薫龍はそんな不意打ちを喰らう。


ガラス片が彼女にも一気に刺さった。


そして、そこにサッカーボールを蹴るように頭部を蹴られた、ダウンした人間への追撃をするという異常な二連攻撃であった。


「将棋の段位は竜王ぐらいしか分からない、チェスもどれくらい強いか分からない、この一撃の更に強い技もあるだろうが、そんなわけで俺は勝ち筋が分からない、それを倒すという話は、つまり殺すという話だから」


暗獄寺終音は普遍的に見えて、彼だけの不変的な力への意思、武の執着心がある。


「もしも、俺がもっと強かったら、世界中のあらゆる争い、闘争、戦争がもっと早く終わったのだろうかという事に悩んでいる、俺は本末転倒な事をしたし、俺が本来、護るべき、愛すべき女性は誰だった?俺が本気で愛すべき女性とは誰だったと思う?」


白原薫龍が傷つきながらも立ち上がる。


「そういうのは抱いてから、考えろよ」


それは多分、皮肉であると思われる。







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