第一話始まりは終わりと同じ⑤


白原薫龍は心に強く根差した思いがある、それは勝者しか戦争の理屈は語れないという事である、それ以外は負け犬の遠吠えだ。


一度、心が折れてなお虚勢を張る、それは鉄板が曲がり、それでも直らないと同じ。


鉄板どころか鉄骨すら粉砕できる自負が彼女にある、鉄骨を粉砕、折り砕き、見せる。


それによって始めて、勝利を崇められる、雑魚や小物に無双の妙技を見せても意味はない、それでは遥か高みを目指せない。


「私は一人の猛者として勝利したい、そして世界を平和と平穏で満たしたいと思う」


暗獄寺終音がその自分語りに水を差す。


「戦争そのものが狂気だ、それを忘れるな、戦争を正気でするというのは常軌を逸脱した答えだ、お前は戦争狂ワーモンガーとしか言えないぜ」


と、とことんまでこけにする。


「‥‥‥国を護るためには狂っても良い、それもまた事実だ、お前らのようにインターネットで口論して人よりも素晴らしい、格上だと思いたいような有象無象とは違うんだよ」


そして、彼女は上着を破いた。


背中には大日如来だいにちにょらいの刺青がある、それは天照と同一視される。


それを彼に見せびらかした。


曇らぬ太陽、様々な呪詛怨念注がれても沈まぬ太陽、どんな悪意にも屈しない太陽。


そんな太陽の権化、権現がここにあった。


足場の立ち位置からしてリビングのご飯を食べるところの机、そして座った椅子からしかとみれる、そのような天晴れさである。


「こんなにも綺麗なお天道てんとうさんもあったもんだ、しかし少し隠れてる」


暗獄寺終音は少し、残念そうだった。


「スポーツブラだよ」


白原薫龍はそんな答えを言ってしまう。


「パンチラスパッツよりも愚行です」


暗獄寺終音は残念そうである。


鬼童正道はそれでも、自惚れず、照れはしたが、すぐにファイティングスタイルの構えをより、完成形にする事を取り戻した。


「さぁまだまだ朝まで殴り合おうぜ!」


鬼童正道はそう意気揚々と叫んだ。


白原薫龍はそんな彼にこう返した。


「あぁ、そうしよう」


外では闇削刑無の暗黒私刑ダークリンチが続けられていた、連続斬り、乱れ飛ぶ斬撃は鎌鼬のようになり四方八方に飛ぶ、錯乱、狂喜乱舞する殺戮への欲求、老いがそれを加速させるのか、他の家の壁も切り裂いてしまっている。それでもなお、裁くことの覚悟は無くならない、それは白原薫龍の覚悟にも似ている。


「さぁ無限に切り裂かれ、それをもって、断罪を終える、そして次の裁判の時間もありますから、これさっさと終わらせたいな」


と、前半と後半で文脈が変わってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る