第一話始まりは終わりと同じ④


浜名湖から水が一気に上へと上がる、それが渦巻くように固まり、そして飛んだ。


それが、白手起家はくしゅきかならぬ黒手終家こくしゅしゅうかの家に突撃する。家のリビングの窓は全て割れた、水の塊は人の姿になり、水色のツインテールとなり、それは渋谷のギャルのような姿になってしまった。都会に憧れた最先端アバンギャルドという感じであり、それが言葉を発した。


「へーいへーい、安心できないねぇ」


と、そんな風に愚痴を溢した。


「私は、多見たけん様、浜名湖を根城とする水龍様、酸いも甘いも噛み分けれる大人のお姉さんって言ったところだよ」


と、そんな自己紹介もしている。


青田刈死導はそんな彼女を一瞥した。


「邪魔しないで‥‥‥」


と、言う言葉に対しては首をふる。


「この田舎街は観光客だっているんだよ、そういう不穏な輩はぶぶ漬けなんだぞ?」


と、謎の知恵袋ミームを披露した。


「まぁ、お前は僕が片付ける事にするよ」


また、水の塊となり、それは川のようになり、氾濫、濁流がキッチンの裏口の扉を破壊しながらもそれを外へと押し出した。


残ったのは白原薫龍と鬼童正道だ。


「‥‥‥デートって雰囲気にはならねぇな」


白原薫龍はその風景をそう指摘した。


鬼童正道はそれに対して興奮していた。


「違うね、男女が真剣に殴り合うのは恋愛のようなもんだぜ?戦闘開始するのか?」


鬼童正道には戦闘の二文字しかないらしい、それによって白原薫龍は苛立ちを募らせる、こんな片田舎でこんな大馬鹿野郎と出会うとは間の悪い話もあったもんだと。


土足で上がったためガラス片は気にしなくても良いが、倒れたならば背中が全身ズタズタになってしまうだろう、何より血の川の匂いでむせ返る気持ち悪いにもなっている。


「‥‥‥‥お前、負けたら悪い事やめるか?」


白原薫龍はそんな提案をした。


鬼童正道はそんな提案を待ち望んでいた。


「御託はいらねぇ、あらゆる能書きもいらねぇんだよ、勝者こそが正義だからな!」


鬼童正道は思い切り右ストレートを放つ。


それを真っ正面から受け止めて倒れないのが白原薫龍という一人の猛者女ガールであった。


「随分、虫がいい話を並べたと思ったら、実力が伴ってないんじゃないのか?」


かつて、日本神話の日本最強ヤマトタケルと言われた男は女装をした。しかし、それは単なる女装だったのだろうか。もしかしたならば、それは女神の武を模倣した形意拳だったのかもしれない。それこそが神道の巫女であり、神官、神祇官じんぎかん、或いは忍者ニンジャかもしれない。


そして、白原薫龍もまた右ストレートで殴り返したが、鬼童正道は倒れなかった。


「お前、それってブーメラン発言だろ」


そのような軽口を叩いた。

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