第29話 王都散策とお邪魔虫 その一
<王都の日程>
9日:到着、非公式歓迎パーティ
10日:商業ギルドでの面談、実演、商業ギルドだけの公式パーティ
11日:商業ギルドから錬金術・薬師ギルドへの引継ぎの非公式パーティ
12日:錬金術・薬師ギルドでの面談、実演、錬金術・薬師ギルドだけの公式パーティ
13日:錬金術・薬師ギルドと王宮魔法師団との引継ぎの非公式パーティ
14日:王宮魔法師団での面談、実演、王宮魔法師団の公式パーティ
15日:フリー
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王都滞在三日目ですが日中の予定はありません。
夕刻からの非公式パーティだけなのです
別にそんなのしなくても良いじゃないと思うのは、私の考えがおかしいのでしょうか?
組織を維持するには色々とお付き合いも大事だと思いますけれど、各団体がそれぞれ合同を含めると三回から四回も公式・非公式パーティを開くのはどうなんでしょうね。
私的には、それぞれの団体間の引継ぎパーティをなくしたら少なくとも二日は王都滞在を減らせると思うし、その分経費を安く上げられるじゃないですか。
主婦的な見方をすれば、とても無駄遣いが多いですし、時間の無駄でもありますよね。
他にすることは無いのかと言いたいぐらいです。
でもまぁ、その無駄のお陰で会合の際には女子三人をつけてもらっているので大いに助かってはいますけれどね。
私ってこの世界の常識を余り知りませんから、リリーに色々と教えてもらってはいますけれど、若い女性が居れば更に色々と話が聞けるので情報収集にとても役立っています。
親しくなると雑談の中に恋バナなんぞもチラッと出てきたりして、結構面白いですよ。
そう言えば私の今の身体ってとっても若いんですよね。
今のところ男性に左程興味が湧きませんが何故なんでしょう?
もしかするとハーフエルフで寿命が長いので適齢期も遅くなるのかしら。
そう言えばひ孫の読んでいたラノベに、エルフ社会では百歳程度は子ども扱いと書いてあったような・・・。
ウーン、だとすれば仮に寿命を5倍として、思春期は60歳とか70歳以降にならないと来ないのかな?
まぁ、それでもかまわないけれどね。
人生長いんだからのんびりやって行きましょう。
丈夫で長持ちが一番です。
お宿で朝食を頂いた後は、王都の散策に出かけることにしています。
あれまぁ、出かける前に念のために周囲に探索をかけてわかりましたが、宿の周辺に不審者が数人いるみたいです。
何故不審者と判断するに至ったかというと、例の初日の非公式歓迎パーティで、紛れ込んでいた「七変化のバーラン」という二つ名を有する闇ギルド所属の男が物陰に潜んで居るんです。
その男の直近に二人、そうして更に念入りに探ってみると、同じ組織に属する者が二人、一人は宿の裏口で張っていますし、もう一人は
ウーン、この様子だとどうやらお目当ては私のようですね。
さてさて、これまで王都には直接の利害関係も無いと思っていたので、まさか私の命が目当てではないでしょうけれど、或いは貴族とかの抱え込み?
サルザーク侯爵の一件では、教会若しくは治癒師ギルドの線もあるかもしれませんねぇ。
若しくは砂糖の輸入業者当たりが私を煙たがっている?
いずれにしろ面倒ですよねぇ。
宿を出るときっと尾行をしてくるのでしょうけれど、女一人に五人もくっついて一体何をするつもりなんでしょう。
ここで三団体が合同で招請している者を誘拐なんぞすれば大騒ぎになりますから、普通ならばしないはずなんです。
狙うなら帰路ですよねぇ。
まぁ、この際ですから出たとこ勝負で動いてみましょうか。
この男たちに気遣って宿に籠るのも嫌ですし・・・。
リリーの話によれば、闇ギルドは正式に認められたギルドではないですし、どちらかというと非合法の活動をする危ない連中のようです。
探索、尾行、いやがらせ、盗み、誘拐、殺人などを金で請け負って実行する組織のようで探偵と必殺仕置き人のジョイントヴェンチャー(言葉の使い方が違ってる?ウン、私もそう思います。)でしょうかねぇ。
テレビでやっていた「必殺」ものはどちらかというと弱いものを助けるイメージでしたけれど、ここでは悪徳のイメージが付きまといそうです。
リリーによれば、王都には三つの闇ギルドがあるのだそうです。
非合法活動の組織ですから、見つかれば王都の警察組織である騎士団辺りに潰されるそうです。
でも、なかなか尻尾を出さず、掴まってもトカゲのしっぽ切りで、中枢までは司直の手が届かないようです。
いずれにしろ誰かの依頼で動いているということでしょうね。
油断なく周辺の動きを見ていましょう。
それと、バーラン以外の不審人物にもマーキングを施しておきました。
彼らと接触する人物にも今後注意を払う必要がありそうです。
王都散策の方は、昨日のパーティで三人の若い女性から聞き出した若い人たち集まりそうな場所へ行くことにしました。
前世で言えば原宿とか吉祥寺辺りなんでしょうかねぇ。
私の若いときは六本木のディスコとか、その前は歌声喫茶?
私の学生時代には歌声喫茶は無くなっていたような気がします。
なんだか学生運動と一緒に衰退したのかもしれませんね。
ディスコの方はしばらく流行っていましたけれど、私は勉強や仕事で忙しくって行ったことは一度もありません。
夫の正樹も馬鹿がつくほどの超真面目屋さんでしたから、デートでもそんなところには連れて行ってくれるような雰囲気は全くありませんでしたね。
別に今から青春謳歌じゃないですけれど、若い人たちがどんなところに行くのか知っておいて損はないでしょう。
そんなわけで最初に来たのはお勧めのブティックならぬ衣装店です。
王都の
女性向けの衣装を仕立てているお店で、出来合いものの新古品や中古の品も置いてあるそうです。
サイズが合えば、新古品や中古品でお得な買い物ができるそうですし、懐に余裕があればオーダーもできるそうですよ。
お店の中はやはり女性客が多いようですね。
男性用品も多少は置いてありますが、広い店舗のうちの5%程度しか割いてありません。
私を尾行していた連中は流石に中には入ってきませんでした。
入れば目立つと分かっているのでしょう。
遠目で入り口を見張っています。
余程仕事が無いのでしょうかねぇ。
朝から五人も使って女一人を見張るなんて野暮な話ですよ。
まぁね、対象者に気づかれないように遠間で見張り、余り尾行をせずに適宜配置を交替することで監視を継続する手法があるとは公安警察の知り合いに訊いたことがありますが、彼らははっきりとわかる尾行をしていますからね。
まぁ、普通にすぐわかるような尾行はしていないのでしょうけれど、相手が悪うございましたね。
それともこちらの目立っているのがダミーで、別に隠れて本隊がいるとか?
ウーンそれは考え過ぎみたいですね。
私の周囲数キロの範囲で闇ギルドに属しているのは6人だけです。
一人増えたのは別の人を尾行しているのを私が見つけちゃったからです。
そうして、さほど時間を置かずにその一人は私の周囲から消えて行きました。
衣料品店で二時間ほど時間を潰そうと思っていましたけれど、ひょんなことから時間が潰せることになりました。
この店のオーナー兼デザイナーのクレア・ジャグルさん。
目ざとく私の衣装に目をつけて私に話しかけてきたのです。
「ごめんなさい。
お客様の衣装が少し気になったのでお声がけしましたけれど、少し私のためにお時間を割いていただけますか?」
「はい、特に急ぎの用事はありませんけれど・・・。
どのようなご用件でしょうか?」
「えっとねぇ、貴方のスカートは数年前に流行ったブルワックのデザインだと思うのですけれど、刺繡とプリーツが凄く素敵なんです。
それに、フリルの付いたブラウスも斬新ですわ。
何処でお買い求めになられましたか?」
「あぁ、これはカボックの雑貨屋さんで見つけた中古の品を手直して作りました。
元々はプリーツ仕立てではなくってフレアだったのですけれど、少し大きめだったのでプリーツに直して寸法を合わせたものなのですよ。
そうしてブラウスのフリルは元々付いていなかったものですけれど、同じ素材の生地を購入して自分で縫い付けたものです。」
「あら、まぁ、ご自分でなさったのですか?
それはまた玄人裸足の腕前ですね。
私はてっきりどちらかの店で仕立てたものだとばかり思っていました。」
それからすっかりクレアさんと話し込んでしまいました。
もっぱら衣装の話ですけれど、私も前世で忙しいながら裁縫を趣味にしていましたから、衣装デザイナーのクレアさんとは話が合うんです。
お店の一角にある相談コーナーの一つを占拠して、お茶を二杯もごちそうになってしまいました。
うん、この店のお茶も美味しいものを使っていますね。
二時間もの間、私が衣料品店から出て来ないので、私を見張っていた男たちはすっかりダレていましたね。
お店では気に入ったアクセサリーを二つほど購入させていただきました。
旅先ですから、荷物を増やさないためにも余り嵩張るものは買えないんです。
お店を出て次は若い女性が多く行くという喫茶店に向かいます。
この情報は、錬金術・薬師ギルドのカレンさんが教えてくれたものです。
美味しいお茶と、焼き菓子を出してくれるお店で「ミスティ・ドゥカ」という名前だとか。
私が精製している砂糖が出回る前から特製の菓子を出してくれるお店だったそうで、男性はほとんど行かないお店だそうです。
お店の雰囲気は良かったのですけれど焼き菓子のお味は今一でしょうねぇ。
面白いことに砂糖を使わずに、多分乾燥キノコ(干しシイタケでは無かったような気がします。)の出汁を使っていました。
甘味は果実と素材そのものの甘味を使っていましたのでとても上品な味に仕上がっているのですけれど、砂糖を使って仕上げる上品な味に比べるとやはり数段落ちてしまうんです。
このお店での工夫は十分に認められますけれど、砂糖入りのお菓子が出てきたら駆逐されてしまうかもしれません。
特に砂糖の刺激的な甘さに慣れてしまうと、このお味は物足りなくなってしまうでしょうねぇ。
砂糖をほんの少し使ってより上品な味を出せるように頑張ってほしいと秘かに思いました。
ミスティ・ドゥカで一時間を過ごし、そこを出ると王宮魔導師団のバルバラさんがお勧めのマントレー戦勝記念公園を散策です。
彼らが何か仕掛けて来るならこの公園かも知れません。
結構な人は居るみたいなのですけれど、公園内は広いですから人目の無いいところで仕掛けるチャンスがあるかもしれません。
そこで何も仕掛けて来ないとなると私の監視だけの役割なのかもしれませんが、それにしては五人は多すぎでしょう。
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