第14話 薄緑の表示の存在?

 💛明けましておめでとうございま~す💛

 💛本年もどうぞよろしくお願い申し上げます💛


 ===========================


 大八車を作り上げ、草原狼の遺骸を積み上げてゆく過程で思い出しました。

 そう言えば草原狼をトレインしてきた薄緑の表示の存在はどうなったの?


 3Dマップで見ると、私の南西方向の極間近に二つの表示がありますねぇ。

 野生の動物ならば逃げる筈なのだけれど、何故そこでとどまっているの?


 で、そっちの方角を見るとくさむらの中に二つ緑色の小さな動物が居るのがわかりました。

 犬?いや、狐?


 緑色は多分保護色なのだろうけれど、地球ではカエルとか、カメレオン、ヘビ、あとイグアナだったっけ?

 鳥類を除いては、それぐらいしか見た記憶がないけれど、今私が見ている獣には毛がある。


 だから爬虫類ではなく、多分哺乳類の類なのだろう。

 頭部は犬に似ているのだけれど、尾は太くて狐みたいかなぁ?


 鑑定を試みたけれど、表示が出なかったので、困ったときのリリー頼みで聞いてみた。

 リリー曰く、精霊に近い神獣でホーリー・テールという生き物の幼生体のようだ。


 幼生体なのでレベルはさほど高くはないのだけれど、そもそも神獣なので鑑定は跳ね返してしまうらしい。

 逃げない理由は、リリーでもよくわからないらしいけれど、あるいはエリカに助けられた事を恩義に思っているのかもしれないと言う。


 リリー曰く、神獣であっても幼生体のうちは魔物に食い殺されたりすることは、ままあるようだ。

 リリーの言うとおりならば、律儀な神獣だなぁと思いながら、気にしないでいいよと念じてみたら、何故か二匹がお揃いで叢からとことこと出て来きちゃった。


 恐れた風も無く、私の足元に近づき足の臭いを嗅いでいるのです。

 この辺の仕草はちょっと犬みたいだよね。


 それから二匹揃ってお座りして私を見上げたのです。

 その目がとっても可愛いもので、ついつい、私が屈んで二匹の頭を撫でてあげると、不意に小さな光が閃いた。


 次いで頭の中にダブルで声が響く。


〖〖マスター、名をつけて?〗〗


 リリーと交わす念話とも少し違うのだけれど、リリーにも伝わったようだ。


『あ、二匹とも従魔にして欲しいと思ってるみたいですネェ。

 でも、こんなケースは初めてだと思いますよ。』


『リリー、従魔って目立たない?』


『ウーン・・・。

 多分、ホーリー・テールのままだと間違いなく目立ちますね。

 カボックでホーリー・テールと分かる人は、聖職者の極一部だけかもしれませんが、緑色の獣なんて珍しいですから、調べられればいずれ神獣と見破られます。

 何せ、聖書にも出てくる伝説の獣ですから・・・。』


『ホーリー・テールのまま・・・じゃないっていうのは、姿を変えろということ?』


『ええ、多分、この二匹は自分の力で見た目を変えることができるような気がしますけれど、もしだめなら、エリカ様の魔法で何とかすればいいと思いますよ。』


『何とかすればって・・・。

 随分と無責任ねぇ。』


『だって、頼まれているのは私じゃなくってエリカ様じゃないですか。

 それに私では如何ともしがたいですし・・・。』


 そう言われると事実に間違いはないから言い返すこともできない。

 よくわからない伝達方法で、二匹に呼び掛けた。


〖もし、従魔にするための名づけならば、条件付きでできますよ。

 条件と言うのは、今の姿形を普通の犬か狐に変えることなんだけれど、できる?〗


〖〖できるよ〗〗


 二匹はそう言って真っ白な子犬に姿を変えた。

 これはどちらかと言うとスピッツ?


 いやサモエドと呼ばれるシベリアン・スピッツによく似ている様な気がする。

 但し、尾が少し太いね。


 尾っぽだけ見ると狐に近いけれど、でもとってもかわいい。

 名前は色々と考えて、パティとマッティにしました。


 目がやや赤みがかった子がパティ、同じく青みがかった子がマッティ。

 名づけるとすぐにきずなが増したのがわかりました。


 間違いなく意思の疎通ができますね。

 二匹ともとても素直な子であることがビンビンとわかります。


〖パティとマッティのお母さんやお父さんは?〗


〖わかんない。

 お母さんと一緒にいたんだけれど、ある日突然僕たち二匹が別のところに飛ばされちゃった。

 理由はわかんない。

 で、森で彷徨さまよっていたら、狼たちに見つかって追いかけられたの。

 一匹や二匹ぐらいなら何とかできても、あんなにたくさん居たから、無理だった。

 マスターに助けられなかったら、僕たち食べられちゃっていたと思う。〗


〖お母さんの居たところってわかる?〗


〖ウーン、近くに大きな湖があってネ。

 太陽の上る方に大きな山がある場所だけど、・・・。

 どこかはわからないや。〗


〖そうかぁ、お母さんの元へ返してあげたいけれど、それだけじゃぁわからないかなぁ。

 周りは寒いところ?

 それとも暖かいところかな?〗


〖えーっとね、ここよりは寒いかな?

 それに雪がたくさん積もることが有ったよ。

 本当に寒い時には大きな湖には氷が張って向こう岸に渡れることもあった。〗


 リリーが情報をくれました。


『イスガルドの地理から言うと、カボックから見て北の北氷洋沿岸、若しくはブレタン大陸やプレガルド大陸、或いは南半球でも緯度の高い場所かもしれません。

 カボックは温暖ですから雪は滅多に降りませんし、湖に氷が張るようなことは絶対にありません。』


『なるほど、世界地図でもあれば湖を探して辺りをつけてもいいのだけれど・・・』


『エリカ様のマップも未だイスガルド全域を表示するには能力が足りません。

 私も、今のところはエリカ様の周辺域でしか精細な地図をお見せするのはできません。』


『うーん、こういう時は*oogle*apがあればいいのにねぇ・・・。

 まぁ、無い物ねだりをしても仕方が無いか。

 この二匹のワンちゃんなら私のペットでも通るでしょう。

 飼い主がわかるように、首輪でもしておきましょうか。」


 周辺の草の繊維成分を取りだし、鉱石から色を抽出して繊維に固定化、三角巾のような布を作りました。

 パティにはピンク、マッティには空色で、ボーイスカウトのネッカチーフ風の首輪にしました。


 これならだれでも飼い主が居るってわかるでしょう。

 そうして万が一のためにもパティとマッティには私のマップでマーカーをつけておきます。

 

 迷子になっても、誘拐されたりしてもこれで居場所がわかります。

 それから人目につかないところまで獲物は大八車ごとインベントリに入れて、西門の近くまで移動しました。


 大八車は人目の付かない街道でインベントリから出して、私が引っ張ります。

 今の私って凄い力持ちですからね、山のような荷物でも平気で引っ張れるんです。


 山盛に積んだ草原狼を見て、遠目にも門の衛兵たちが騒いでいるのがわかります。

 まぁ、多少騒がれても仕方がありません。


 既に草原狼を倒したことは「カボックの旋風」の人たちに知られていますし、ギルドにも報告されていることでしょう。

 それを隠すとまた面倒になりますからね。


 パティとマッティは私を先導するようにとことこと私の前を早足で駆けています。

 時折私を振り返って確認している風情がとっても可愛いですね。


 門の衛兵さんにギルドカードを見せて無事に街の中に入りました。

 ギルドまで荷物を運び、今日の報告をしておしまいなんですが、ミリエルさんに従魔と言うかペットと言うか、パティとマッティの扱いについて確認しました。

 

 ミリエルさんが二匹を見て、一応飼い主としての登録さえしておけば大丈夫と言うことなので、こちらの世界のスピッツに似た白い犬である「チェイム」と言う種類で登録しておきました。

 もちろん、パティとマッティの名前で登録ですが、従魔ではなく、猟犬という建前になります。


 万が一、ホーリー・テールとバレた時には別途従魔としての登録に変更するつもりです。

 さてさて、今日の稼ぎは、薬草だけでもハーベディロン200把ですので、少なくとも大銀貨2枚にはなりそうです。


 ランクが良ければ倍以上の金額になるかもしれません。

 但し、草原狼を含めて査定は明日になりそうです。


 昨日のゴブリン退治の報償については、取り敢えず金貨1枚が参加者全員に支給されることになったそうで、私も金貨1枚分の報酬をいただきました。

 後は、それぞれの貢献度に応じて報奨金が出るようなのですが、ギルマスが領主様に報告しがてら配分についての相談を行っているようで、その分は明日以降になると言うことでした。


 参加したのは総勢で30名強ですから、参加費用だけで金貨40枚近くになります。

 日本円換算で800万円近くになるのでしょうか。


 僅かに半日働いただけで20万円ほどの稼ぎになるのですから、とってもいい稼ぎですよねぇ。

 まぁ、今度の場合は、皆さん命を懸けての稼ぎですので、そう高くもない報酬かもしれませんが・・・。


 私は金貨1枚ではなく、大銀貨9枚と銀貨10枚に小分けして貰いました。

 どうも金貨での支払いというのはカボックでは滅多にありません。


 それよりは大銀貨以下の使用頻度が高いんです。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る