第4話 城壁都市カボック
多少の上り下りはあるものの比較的なだらかな道を2時間ほど歩くと、ようやく高い城壁に囲まれた街が見えだしました。
リリーに確認すると、間違いなく目の前に見える街がサルザーク公爵領第二の都市カボックだそうです。
カボックに到着する前にリリーと相談して、魔法や武術を色々試しながら歩いて来ました。
腰に下げているのはショートソードなんですが、インベントリの中には、長剣、小刀、ナイフ、槍、棒、弓、盾などいろいろな武具が入っていました。
籠手や脛当てに簡易の兜まであって、なんだか何時でも闘いに行けそうなのですが、私は一応平和主義者です。
万が一を考え、使い勝手だけ覚えるために少しずつ使ってみましたが、どれも簡単に扱えてしまって、自分自身でちょっと驚いています。
運動音痴とまでは言わずとも、私は生来アウトドア派では無かったはずなんですが・・・。
転生と同時に少し脳筋に生まれ変わってしまったかもしれません。
魔法なんか、ぶっちゃけた話、ビックリマークのオンパレードでしたね。
指先から水やら火やら稲妻まで出てくるんですから、やってる当人が慌てまくりです。
幸いにして周囲に大きな被害はありません(?)でしたけれど、間違いなく動物に当たれば即死ですよ。
だって、指先から出した
私の太腿ほどの太さの幹の灌木が一瞬のうちに割けて、黒焦げになりましたから。
どうも魔法を使う際には少し手加減をする必要がありそうです。
リリー曰く、イメージの問題なのだそうですが・・・・。
魔法だけでなく体力の方もとんでもないことになっていました。
リリーに言われて
リリーに注意されてできるだけ柔らかく掴んだつもりだったのですけれど、私の馬鹿力で粉砕している様なんです。
実に十数回も試してようやく石を持ち上げることに成功、次いで立ち木の枝を剣で断ち切ってそれを拾い上げたところ、またもや「バキャッ」と砕けましたね。
これも自然に掴めるまでに十回ほど練習しました。
次いでリリーに言われたのが、立ち木の上にある鳥の巣の卵を掴めという無理難題です。
立ち木の上の鳥の巣はすぐに見つけられましたし、七メートルほどの高い木の上にも難なく一跳びで跳び上がれましたけれど、卵を掴むのはとても難しかったですね。
一個目は潰してしまい、命あるものを意味なく殺してしまったという
その後涙目で何度か失敗しながらようやく掴み上げることができました。
因みに二度目以降の失敗では潰さなかったけれど、掴む力が弱すぎて持ち上げられなかっただけですヨ。
だって、力を入れたら壊れるんですから・・・。
怖くて力を入れられないじゃないですか。
いずれにせよ人気のないことを確認しながらこれらの修練や訓練をしてみましたので、
そのお陰で空間魔法の気配察知が上手になりました。
何せ周囲数十mにわたって動物等の気配が確認できるんです。
ついでに脳内マップを作ってそこに投影したら三次元タイプの索敵レーダーみたいになっちゃいました。
脳内チェックでマーカーをつけておくとその動きも半自動で監視できます。
因みに数十匹以上の動物を対象にしてマーキングできたので、それ以上はやっていませんが、多分もっともっとできるのだと思います。
あぁ、そうそう、前にも申し上げた様にインベントリにはお金が入っていました。
直径3.5センチほどの金貨が19枚、直径5センチほどの大銀貨が9枚、直径3センチほどの銀貨が9枚、直径4センチぐらいの大銅貨が9枚、ほぼ10円玉ぐらいの銅貨が10枚でした。
インベントリの表示でそれぞれ金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨と分かりましたし、リリーの説明によってそれぞれ十枚で上の貨幣に相当することがわかりました。
この世界では、金貨一枚で一家四人が贅沢しなければ一月ほど暮らせるそうです。
日本でも金貨は市中価格で10万円から20万円ほどのはずでした。
金の含有率や大きさによっても違うのでしょうけれど、地球の金貨の場合は本来の流通貨幣じゃないですから美術的価値や付加価値が付けられて少しお値段が高いようですね。
金貨の場合、1キロのものが1千万円を超えていましたので、多分本来の金の値段の倍額ほどで売られていたように思います。
こちらでは流通貨幣でしょうから、倍額の値段までは無いような気がしますけれど、どうなんでしょう?
それに銀と金の価値が地球とは違うようですね、
銀貨百枚分、大銀貨10枚分が金貨一枚に相当するようです。
東京で考えた場合だと一月10万円で一家四人の生活はちょっときついかもしれません。
四人家族で左程贅沢せずに無理なく生活するにはやっぱり一月20万円ほどの収入が必要じゃないかなぁ。
住居費、光熱費などが無ければもう少し安くても大丈夫だけれど・・・。
いずれにせよ、結構な現金を持ったまま、カボックの門前に無事到着しました。
門前には馬車と人の列ができています。
種族は多彩ですね。
列に並んでいるのは、人族が一番多いのですが、獣人族がその次に多く、エルフ族、ドワーフ族は少ないですね。
魔族と天使族は生憎と見かけませんでした。
リリーによれば、ラムアール王国は、六族融和政策を掲げ、異種族に対して寛容なのだそうです。
一方でコルラゾン大陸北西域にあるセンディブル帝国など、人族以外の種族を毛嫌いして差別している国もあるようです。
列に並んで待っていると小一時間ほどでエリカの順番が巡ってきました。
目の前には簡易型の鎧を着て槍を持った男性が二人、その先にも槍を持った衛兵さんのような男性が居ます。
目の前の男性がエリカに向かって言いました。
「身分証明を見せなさい。」
緊張しましたが、相手の言うことはしっかりと理解できましたし、それに、応えるべき言葉も直ぐに浮かびました。
アリシアさんは良い仕事をしてくれたようです。
「すみません、身分証明書を紛失してしまったようなので、街のギルドで新たに作ってもらうつもりでいます。」
「うん?
そうか、・・・。
なら、そこに在る水晶に触れなさい。」
これもリリーに教えられて知っています。
なんでも罪を犯した者のデーターをアカシックレコードから読み取る装置なのだそうで、重い罪状が無ければそのままで、殺人や強盗などの重罪人であれば赤く光るのだそうです。
因みに時効があるようで、軽い罪であれば1年、比較的重い罪で10年、重罪では50年でご
また、
もちろん私の場合は何の問題もありませんでしたが、その代わりに入域台帳に署名し、街への入域料として銀貨一枚を収めなければなりませんでした。
尤も三日以内にギルド等で作成した身分証明書を門番に見せれば当該入域料は返してもらえるようです。
その上で晴れて街の北門を通って、街に入ることができました。
カボックの街に入るのは勿論初めてなのですが、リリーのお陰で街のマップが脳内に収まっていますので歩くのには困りません。
グー*ルマップよりも詳細に小道まで描かれていますし、検索を掛ければどんなお店もすぐに探し当てられます。
また、一旦設定すればカーナビよろしく矢印で道案内もしてくれますし、治安の悪い地域などは黄色で警告してくれるのでとても便利です。
リリーの説明によればギルドで一番手続きが簡単なのは冒険者ギルドなのだそうです。
一定年齢に達していれば誰でも冒険者として登録ができますが、一定期間に一定の成果(クエストをこなすこと)を上げなければ登録は取り消され、証明書の効力は失われてしまいます。
登録時に必要なのは北門にあったような水晶に手を触れるだけで、ここでは種族と年齢と名前だけが表示され、ランク別の登録カードに転記されます。
冒険者ギルドの場合、最初は赤銅(「RC」ともいう:F)ランクから始まり、青銅(「BC」ともいう:E)ランク、白銅(「WC」ともいう:D)ランク、赤鉄(「RI」ともいう:C)ランク、黒鉄(「BI」ともいう:B)ランク、銀(「シルバー」ともいう:A)ランク、金(「ゴールド」ともいう:S)ランク、紅白金(「レッドゴールド」ともいう:SS)ランク、ミスリル(SSS)ランクまでの9段階のランクであるけれど、レッドゴールドやミスリルのランクの保有者はここ数百年ほども出現していないそうです。
ゴールドランクでさえラムアール王国には一人しか存在しないらしいのです。
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本日はもう一話投稿します。
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