第2話 イスガルド

 絵里香が次に気づいた時は、街道筋(と思われる場所)に独り立っていました。

 見慣れない服装ながら、革製のパンツをはき、木綿に似た素材の長袖シャツに革製のベスト、左腰には刃渡り40~50センチほどのショートソードが鞘に収まって吊り下げられています。


 ショートソードは、手に持ってみると何故か意外と軽かったのです。

 肉厚な両刃の剣だからもっと重い筈なのに、まるでバルサ材のように軽く感じられます。


 軽く振るとシュンと音がしました。

 こんなに軽いとなるとひょっとして折れやすいのかしらと心配にもなります。


 生前の絵里香に武道の心得はありません。

 ですから、できればこんな武器など使う様な場面がありませんようにと心から願いました。


 亡くなる前は90歳を過ぎると流石に体力的にも弱体化して、動きそのものに切れが無くなっていたし、疲れやすく、腰も曲がりがちになっていたのですけれど、ここでは凄く身体が軽いみたいです。

 ひょっとすると青春時代の身体に戻ったのかも知れません。


 手の甲にしわが無いし、額や目元など顔に触っても皺が無いんです。

 これは一度鏡で自分の姿を確認しなければならないと思いました。


 髪はポニーテールにまとめられており、肩口から覗く髪は青緑色なのが確認できました。

 まぁ、80歳を過ぎてからは、髪の毛全てが白髪だったから、色がついているのはとても嬉しいのですけれど、青緑というのはテレビのコスプレでしか見たことがないので、ちょっと引いてしまいます。


 でも、これはどう見ても地毛じげであって、染めた色ではなさそうですね。

 足元はとても丈夫そうなショートブーツの紐靴です。


 ヒールは少し低めかも知れないけれど、重くはないし、履き心地は悪くありません。

 天気は晴天、快晴とまでは行かないのですがよく晴れています。


 風はあるものの心地よく、気温は暑からず寒からず、ちょうどよい気温なので或いは春若しくは秋ぐらいの気候なのかも知れませんね。

 街道の周囲の植生は、どちらかというと森の中なのでしょうけれど、高い樹林の中にところどころに灌木や草むらが生い茂っています。


 植生密度が高いので危険な動物がいても容易にはその姿が見えないかもしれませんね。

 いずれにせよ街道筋の一方に、中天にかかる太陽が青白く見えるので、アリシア様の助言に従ってそちらに向かって歩き始めました。


 歩きながらアリシア様が言っていたガイド妖精のことを考えていると、脳内に話しかけられました。


『はい、お呼びでしょうか?』


 いきなりだったのでぎょっとして思わず言葉が出てしまいました。


「えっ⁉

 と、貴方、誰?」


『私は貴方様付のガイドを用命されている妖精です。

 名前はありませんが、宜しければ貴方様が名付けてくださいませ。』


「名前ね?

 うーん、どうしようかしら・・・。

 貴方の姿を見ることはできるのかしら?」


『お口に出さずとも思念でオハナシすれば、私には伝わりますので念のため申し添えます。

 じゃぁ、姿をお見せしますね。』


 テレビだと効果音でも出すところなのだろうけれど、いきなり絵里香の眼前に出現したのは四枚の薄い羽根を持つフェアリーでした。

 おとぎ話の挿絵さしえに出てくるティンカーベルはボンキュボンのグラマラスな肢体を持っているようですが、出現した妖精の身長は精々20センチ程度で、なおかつ幼児体形のままなので余計に可愛いく見えます。

 

 名前の方は彼女の白い衣装から百合をイメージしたのでリリーと名付けました。

 名付けた瞬間、絵里香とリリーの間に光が交錯し、絆が深まったのを感じましたね。


 歩きながらリリーから色々とお話を聞かせてもらいました。

 絵里香が降り立った転生したこの世界は、イスガルドと呼ばれる世界のようです。


 七つの海洋と七つの大陸がある世界で、様々な動植物が海と陸それに空に生息しています。

 中でも文明と呼べるものを有する社会には、人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、魔族それに天使族の六種族が存在し、それぞれに数は少ないようですがハーフも存在します。


 一般的に異種族間の子供は妊娠しできにくいという特性があるようです。

 そうして普通の動植物とは別に、魔獣や魔素溜りから生まれる魔物がこの世界には存在します。


 普通の動物が魔素溜りに長期間触れてしまうことで魔獣に変わることがあるのです。

 魔獣は魔物と異なり魔核若しくは魔石を持たないようです。


 一方で魔物は魔素溜りそのものから生まれてくる異形の怪物であり、他の魔物を捕食することにより更にキメラに変化することがあるようです。

 魔物は魔核(若しくは魔石)を体内に持っています。


 絵里香の今居る場所は、コルラゾン大陸東部域にあるラムアール王国で、その南部領域の一つサルザーク侯爵領であり、領内第二の都市であるカボックの近郊であるようです。

 リリーの説明では女神アリシアの言っていた近くの街とは、どうもカボックのことらしいですね。


 コルラゾン大陸は、イスガルドの北半球に属する大陸の中緯度帯に在り、亜熱帯から温帯域にかけて位置しており、気候は冬でも左程寒くはならないようです。

 コルラゾン大陸は、東西に大きな塊二つをくっつけて、中央の南北方向がくびれている様な瓢箪形をしているらしいのです。


 この大陸では、雪は低地では降らず、東部域及び西部域の中央を東西に走る山脈の高地部分でしか見かけられないようです。

 一部が亜熱帯には属しているものの湿度が低いために夏であっても左程蒸し暑い気候にはならないようです。


 リリーの説明によれば地球とは異なり、惑星公転軌道面に対する地軸の傾きがほとんど無いためにこの世界は季節変化に乏しく、緯度の違いや高度の違いが気候に大きく作用するようなのです。

 従って絵里香が今感じているさわやかな気候は、多少の変動はあっても一年を通じてあまり変わらないというのです。

 

 それでもわずかながら乾季と雨季が季節の変わり目になるようですね。

 そのためにコルラゾン大陸では、前乾季ハブラ後乾季ナブラ前雨季ハクル後雨季ナクルという呼び名の季節があります。


 当該季節は前乾季と後乾季が120日ずつ、前雨季と後雨季が60日ずつに分けられているのですが、この分け方はコルラゾン大陸独自のモノであり、他の大陸ではまた異なる仕分けをしているようなのです。

 そのために世界的に共通の暦が一応あるものの、コルラゾン大陸では余り一般的ではありません。


 言語も大陸や地域によりかなり違いがあるのですが、一応の共通語が普及しており、共通語が使えるなら都市部では困らないようです。

 因みに絵里奈には女神から言語理解の能力が渡されており、イスガルドの何処の世界でも言葉に不自由は無いし、既に失われた知識である古代言語まで解読できる能力があるそうです。


 リリーの指導で、絵里香のステータスを確認してみました。

 思念で「ステータス・オープン」と念ずると、目の前にホログラムのような表示が現れました。


 視界を完全に塞がずに透けて見える硝子板のようなスクリーンですね。

 因みにこのスクリーンは、絵里香以外の者には見えないそうです。


名前:エリカ・コヒナ

種族:ハーフエルフ(ハイヒューマン)

年齢:17歳

性別:女

職業:------

レベル:234

HP(生命力) :500,000

MP(魔力) :500,000

STR(筋力) :999

DEX(器用さ) :999

VIT(持久力) :999

INT(知性) :999

MND(精神力) :999

LUK(運) :999

AGI(敏捷性) :999

CHA(魅力) :999

言語理解   :MAX(共通言語ほか)


【身体スキル】

剣術 :LV10

槍術 :LV10

棒術 :LV10

格闘術 :LV10

斧術 :LV10

弓術 :LV10


【ユニークスキル】

錬金術 :LV10

鑑定術 :LV10


【魔法スキル】

生活魔法 :LV10

隠ぺい術 :LV10

火属性魔法 :LV10

水属性魔法 :LV10

植物属性魔法 :LV10

金属属性魔法 :LV10

土属性魔法 :LV10

風属性魔法 :LV10

光属性魔法 :LV10

雷属性魔法 :LV10

聖属性魔法 :LV10

闇属性魔法 :LV10

無属性魔法 :LV10

時空属性魔法 :LV10

付与魔法 :LV10

召喚魔法 :LV10

精霊魔法 :LV10

調教魔法 :LV10


【加護】

 アリシア神の加護


【称号】

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