第16話 Parents《親》
「刑事さん、お疲れ様です」
「いえいえ、どうか、お構いなくっ」
私は
驚いたことに、
アイドルだから一人暮らしで、派手な生活をしているのかと思っていたけど。
リビングのテーブルには、
テーブル越しに、私とメモリーカードを抜いたタロちゃんが向かい合っていた。
ホント、嫌われちゃってんのね私。
ポジティブに考えれば、引きこもってもらっていた方が、身の安全は保たれるかもしれない。
私は真剣な面持ちで、
「ご実家の方に、
「ええ。全て会社
「そりゃ良かった」
私が手放しで喜ぶ一方、
「でも、最近、娘はすっかり神経質になってしまいまして。いつも、ピリピリしているみたいなんですよ」
「そりゃあ、命狙われたら、誰だって
私は
「ですが、これからは、私どもが誠心誠意、お嬢さんを見守りますから、どうぞご安心下さい」
「はい。どうか、娘をよろしくお願いします」
「うちの子は、決して悪い娘じゃないんですが。年頃のせいか、どうも素直じゃなくてね」
「分かりますよ。私にも、年の離れた妹がひとりいるんですけど。つい最近まで、『お姉ちゃんお姉ちゃん』だったのに、ある日突然、急につれなくなりましてね」
私が頭を掻きながらヘラヘラ笑いながら言うと、
「あらまぁ、そうなんですか」
「年頃の娘は、なかなか気難しいですよね」
「ですよねー」
和やかな笑いが起きる中、タロちゃんだけが真顔だった。
話がひと段落したところで、私は腰を上げる。
「そろそろ、私どもは、車に戻ります」
「そんな、もっとごゆっくりされたらいいのに。もしよろしければ、うちにお泊りになられても」
「いえいえ、遊びに来てるワケじゃありませんから。私どもは、家の外から
『はい、
私とタロちゃんは軽く頭を下げて、玄関へ向かった。
「何かあったら、いつでも声をお掛け下さいね」
「はい。そちらもどんな小さなことでも、変化がありましたら何でもおっしゃって下さい」
私が答えると、
「ええ、分かりました」
「よろしくお願いします」
「はい。あ、そうだっ」
私は胸ポケットから、小さな機械を取り出した。
これは、鈴木
ぎこちなく
「そのぉ……、もし良かったらで良いんですけど。この盗聴器をですね、娘さんの部屋のドアにでも付けてもらえませんかね? あの、やましい気持ちじゃなくって、何かあった時の為に……」
私は、失敗したと思った。
そりゃそうだ。
いくら
私も同じことを言われたら、
「あ~、やっぱ、ダメですよね。すみませんでした、これはなかったことにして下さい」
慌ててしまおうとすると、
「え?」
「協力しますよ。娘の命には、代えられないですからね」
そう言って、
私とタロちゃんは、
ミニパソコンに繋いだヘッドホンを装着すると、鈴木准教授特製高感度盗聴器が音を拾う。
トントントンと、階段を上がる足音。
足音が止むと、コンコンッとノックの音がした後、
『少し話せるか』
『話したくない』
すぐに、
それに構わず、父親の
『「アイドルは二の
父親の優しい想いがこもった
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