第14話 Idol singer《アイドル歌手》
ところ変わって、芸能事務所「
私は、
「この度、
私は警察手帳を見せながら、自己紹介をした。
隣に立っているメモリーカードを
『同じく、加藤太郎です』
私は手帳を読みながら、社長に確認する。
「
「ええ……」
深刻そうにうつむく社長に、私は同情し、フォローするように慌てて言う。
「あの、え~っと、その、
「人気があるのは、良いことなんですけどねぇ。悪いことに、マスコミに情報が漏れてしまいましてね。それ以来、事務所のイメージダウンも
社長は、やれやれといった感じで首を横に振った。
怒りがこみ上げてきたけど、私は何も言わなかった。
その時、ドアノックする音が聞こえた。
「入りなさい」
社長の返事を受けて、ドアが開かれた。
「失礼します」
入ってきたのは、いかにも学校帰りといった制服姿の女子高生だった。
この
まだ高校生だし、社員じゃないだろうからアイドル志望かな?
社長は軽く笑みを浮かべると、女子高生に私達を紹介する。
「ああ、ちょうどいいところに。
「どうも」
女子高生はニコリともせずに、私達に軽く
え? これが
目の前にいる女子高生は美少女ではあるけど、普通の女子高生って感じだ。
ギャップに驚いていると、社長はドッキリが成功したような顔で楽しげに笑う。
「刑事さん
「へぇ、まるで別人ですね」
私が感心していると、
「やっぱりアタシ、アイドル
「えぇっ?」
突然の爆弾発言に、私は目ん玉
机に
「失礼しますっ!」
私が
それを見送って、社長が深々とため息を吐く。
「
「女王様は、ご
私が苦笑しながら肩を
「とにかく、
「はい、かしこまりました。
私が姿勢を正して
私とタロちゃんは社長室を出ると、
「なんでアタシが、こんな目に
「まぁまぁ、怒ってもしょうがないでしょ?」
隣に座った中年女性がなだめようとしてるけど、
「こっちは、別にやりたくもないアイドルやってるってのにさっ」
「会社にも事情があってね、仕方ない部分もあるのよ」
「マネージャーは良いよね、一般人だから自由で」
「ワタシだって、何もかも自由ってワケじゃないですよ」
中年女性は、マネージャーさんだったらしい。
マネージャーさんが苦笑すると、
「アイドルって、こんな
「アタシ、アイドル
「それ、本気で言ってるんですか?」
困り果てた表情のマネージャーさんに、
「うん。元々アイドルなんて、興味なかったし」
「ファンが大勢いるんですよ? 歌手の夢だって、どうするんですか?」
マネージャーさんが引き止めようと
「だって、アイドルはもう
「現実の刑事って、ドラマと違って地味で役に立たなそう」
短気な私は、むっとして言い放つ。
「
「何が?」
私の態度が気に食わなかったのか、
私は説き伏せるように、怒声を張る。
「私達警察はね、誰かに評価されたくて命張ってるワケじゃないんですよっ!」
『はい』
横にいたタロちゃんも、短く同意してくれた。
しかし、
「で?」
「『で』って?」
「だから?」
冷たい口調で言い返されて、私はしどろもどろになって答える。
「あ、いや、だから、私は……」
「ホント、どいつもこいつも
私は慌てて、呼び止める。
「待って下さい! まだ話は……」
「もう、うんざりっ!」
腹立だしげに言い放つと、
私はやり場のない手を伸ばしたまま、情けない表情を浮かべた。
取り残されたマネージャーさんが、苦笑して私達に頭を下げてくる。
「あの年代の女の子に、頭ごなしに
「
私は肩を落として、タロちゃんに話し掛ける。
「私、何か間違ったこと言ったかな?」
『いえ、ただちょっと……』
タロちゃんが何やら
「『ちょっと』? 何?」
タロちゃんはそれっきり、何も答えてくれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます