第13話 Update《更新》
「タロちゃん、ちょっと失礼」
『はい』
『お久し振りです、
「た、タロちゃん……っ!」
『
私は香水なんておしゃれなものは、産まれてこのかた一度も付けたことがない。
香水は、鈴木
鈴木
以前は、付けてなかったはずだけど。
まさか、アップデートってこの香水のこと?
「ふ、ふふっ」
『泣いたり笑ったり、相変わらず忙しい人ですね。何かあったのですか?』
「何もない。何もなかったんだよ、タロちゃん……」
何もないことが、辛かった。
ただ、あなたがいなかった。
それだけが、
あなたに
それだけで、
いろんな感情がグチャグチャになって、私は
『泣きたい時は、いくらでも泣いて下さい。僕でよければ、いつでもいくらでも胸を貸しますから』
私は
「ごめんね、面倒掛けて」
『いえいえ、構いませんよ。はい、よろしければどうぞ』
「ありがとう」
紙コップ入りのココアは、警察署内にある
そこで、ふと気が付く。
「タロちゃんって、お金持ってたの?」
『“多少は持っていた方が良い”と、鈴木
「まぁ、それもそうか」
確かに、何かあった時の為に、持っているに越したことはない。
最近は、なんでもスマホ
ああいう人って現金しか使えない時、どうするんだろう?
タロちゃんは、以前から持っていたのかな?
使っているところ、見たことないけど。
ロボットだから、使う機会もなかったし。
『良かったら、見ますか?』
「見ていいの?」
『
「警察なんだから、盗む訳ないでしょ」
財布はブランド物ではなく、一般的な長財布。
中身を確認すると、札入れ側には
どれも
2024年7月に新しいお札へ変わったことは知っていたけど、
まだそれほど新しいお札は出回っていないから、見たことがなかったんだよね。
そういえば、「新しい札に変わった時は
あとは
たぶん、
私だったら、こんなにたくさん持ち歩かない。
普段の買い物はスマホ
「へぇ、意外と現実的な
『鈴木
「ふぅん……よく分かんないけど、誰かの
『鈴木
「鈴木
私は
しばらく笑った後、
『ところで、行かなくていいんですか?』
「っと、つい、まったりしちゃった! 今、何時何分っ?」
慌てて時間を問うと、
『午前10時33分40秒、1、2……』
「もう、そんな時間っ?」
私は少し冷めたココアを飲み干して、紙コップを
「さぁて、お仕事開始だ! 行くよ、タロちゃんっ!」
『はい、
やっぱり、こうでなくちゃっ!
走り出そうとして、
人間の平均歩行速度は時速4kmだから普通だけど、急いでいる時には困る。
次のアップデートでは、走れるようにして欲しい。
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