第6話 アンドロイドさらに活躍
アンドロイドフェスティバルから一年が経った。いまや増産されたアンドロイドは様々な分野で活躍していた。
アナンはアンドロイドの特性を生かして災害の現場処理を短時間で処理していた。
クリスは器用な外科手術の技術が認められ、外科以外にも、脳外科や、内科の範囲まで担当するようになり、一日に五十人以上の患者を診ることがしばしばであった。実際に手術を行った患者はみな完治していった。
ハンスは経理の仕事を一日で百人分こなしていた。
モグリはアンドロイドの特殊能力を使って事件を次々に解決させていた。例えば彫刻の中にある死体をセンサーで見つけたり、逃走班をあっさり捕らえたといった、アンドロイドならではの能力を存分に発揮して人々を驚かせていた。
サンエバーはある時期いじめの解決に全力を注いだ。そのいじめの解決への対処は見事であったため、その状況を辿ってみる。
X君という男子生徒が他の八人にいじめられていた。X君何とか助けを借りたくてサンエバーに相談した。サンエバーは、まず、実際にいじめを行っている現場を見る事にした。
ある日、校舎の裏で八人の生徒がX君を囲んで睨みつけていた。その八人の生徒を、A君、B君、C君、D君、E君、F君、G君、H君として、X君はその八人を無視して歩こうとしたら、
「おい、シカトするなよ」
A君が威嚇するように接してきた。
そこでX君は反発した。
「毎回毎回なんだよ」
そう言うと、A君が脅すように言った。
「何だお前。Xのくせにいっぱしの口をききやがって」
「僕に付きまとわないでよ」
B君が横から口を出してきた。
「Xのくせに生意気なんだよ」
さらにC君が、
「そうだ、こそこそと俺たちと会わないように帰るんじゃねえ」
X君は反発した。
「そんなの僕の勝手だろ」
X君がそう言ったとたんA君はX君の胸倉をつかんで、
「おい、お前。いつから俺たちに意見できる身分になったんだよ。あんまり逆らうとまた殴るぞ」
この時、どこからか声がした。
「おい、そこで何をしている」
その声にA君が反応して、
「やべえ、みんな逃げろ」
いじめ組みの八人はその場から去り、サンエバーが現れた。
「君がいじめられていたということは本当でしたね」
「先生、僕はじめて拒否できましたよ」
「よくできましたね。後は任せてください」
サンエバーはX君にいじめをしている八人の生徒を一人一人呼んだ。
最初はX君である。
「先生、なんだよ、急に呼び出して」
「君が何人かとつるんで一人の生徒を脅しているところを見ましてね」
「それがどうしたって言うんだよ」
「君はその行動についてどう思いますか」
「どうにも思っていないよ。だから早く帰らせろよ」
「君が本音を言うまで帰しません」
「うるせえ、暇なだけだよ」
「それだけですか」
「そうだよ。言ったから早く帰らせろよ」
「まだ、君の本音は聞いていません。まず、そこに座りなさい」
H君はとりあえず座ることにした。
「本音はさっき言ったろ」
「それはあくまでも表面的な理由です。その理由の原因となっている本音を聞きたいだけです。君は暇だからといっていました。つまり、暇な時間を何かで潰したいということではないですか」
「そうだけど」
「ではいじめではなく、他のことをすればいいのではありませんか。君はX君に対して何かあるんです」
H君は沈黙した。サンエバーは話を続けた。
「君が暇を潰したいというなら思いっきり充実できる何かがあればいいですね。それに関してなら協力しますので、とりあえずいじめは止めなさい。損はあっても得はしません」
「だけど、暇だったからAの仲間に入ったら、そこから抜け出せなくなっただけだよ」
「Aが怖いから抜け出せなくなったのではないですか」
「周りの奴らもみんなそうだよ」
「それならA君から全員はなれればいいというわけです」
「そうだけど」
「それならば、私がそうするように動いてみましょう。それでいいですね」
「はい」
「わかりました。君はA君とつるんでいじめをすることをやめると書いた紙に名前と拇印を押してください。他の人に関しては私が責任をもって実行しましょう」
次はG君を呼び出した。
「先生、何ですか。急に呼び出して」
「君が何人かとつるんで一人の生徒を脅しているところを見ましてね」
G君は内心やばいと思いながら、
「先生の気のせいじゃないですか。俺がそんなやつに見えます?」
「そうですね。少なくともこの目で現場を見ましたから間違いありません。それに、自分の苛立ちを何かにぶつけたいというふうに見えます」
「なにが言いたいんだよ。つまらないことだったら帰るぞ」
「待ちなさい。とにかく座りなさい」
サンエバーの気迫はG君にも伝わった。G君は黙って座って、
「まず、君はいじめに対してどう思いますか」
「そんなの知るかよ」
「それで理由はなんでしょうか」
「そんなものないよ。ただなんとなく」
「理由なしで人を傷つけるといったことは許しがたいことです。それを君がされたらどう思いますか」
「しょうがないだろ。イライラしてるんだ」
「ということは、君はイライラしているというストレスが原因ですね」
図星だったためG君はしばらく沈黙し、答えた。
「別にストレスなんかどうだっていいよ」
「いや、ストレスは今では社会問題の一つになっています。君が感じているストレスとは何かを私に言ってもらえませんか。少しでもストレス解消になると思いますが」
「・・・うちの親が勉強、勉強ってうるさいんだよ。あれやれ、これやれと。さらに、学校では俺は成績が悪いから、起こられたり、馬鹿にされたりするんです。それに勉強は面白くないし、だから、ストレスが溜まって」
「そうですか。ということは、君にとって勉強は苦痛だということですか」
「そうだけど」
「それでは、いじめと君のストレスの根本とは全く関係のないものですね。それならいじめは止めなさい。いじめは君にとって得する事は何もありません。そして、勉強に関しては、私が、勉強の楽しさを君に教えましょう」
「勉強の楽しさか。初めて聞いた気がします」
「それでは君にとっては意味のないことですので、いじめはやめますね」
「はい」
「それではいじめをやめるという証明書に君の名前と拇印を押してください」
次はF君を呼び出した。
「先生。何ですか。急に呼び出してきて」
「君が何人かとつるんで、一人の生徒を脅しているところを見まして」
「あれは僕だけじゃないですよ。他の人だって」
「私は君だけを呼んでいません。他の人とも話をしています。それより君はいじめについてどう思っていますか」
「あまりいいとは思っていません」
「少しは自分が悪いという自覚はあるようですね」
「はい」
「しかし、あまりではなく、完全に悪いです」
「すいません」
「では、君はいじめをやめますか」
「・・・・・・それをやめたら仲間がいなくなる」
「それは違うんじゃないですか。君が欲しいのはいじめのための仲間ですか。それとも友情で結ばれた仲間ですか」
「友情で結ばれた仲間です」
「他の人と友情で結ばれた仲間ができればいいわけですね」
「そうです」
「それならば、いろんな人と自分から接点をもって下さい。そして、いじめというつまらない目的で共にいる仲間より、大きな目標を持っている人と共に進むという仲間を見つけてください。そうすれば、君は変わると思います」
「難しそうですね」
「つまり、大きな夢を持っている人と接するには、例えばクラブ活動をするのもいいですし、一生懸命になっている人と触発し合うことです。そうすれば君は望んでいるような友情を手に入れられると思います」
F君はしばらく考え、
「わかりました。いじめはやめます」
F君はいじめをやめるという証明書にサインを書き、拇印を押した。
次は、E君が呼ばれた。
「先生。いきなり呼び出してなんだよ」
「君が何人かとつるんで一人の生徒を脅していたところを見ましてね」
「それがどうしたって言うんだよ」
「君はその行動についてどう思いますか」
「うるせえ。そんなくだらんことなら帰るぞ」
「くだらなくありません。君が本音を言ったなら帰しましょう」
「本当だな。学校がむかつくからだよ。もう言ったから帰るぞ」
「待ちなさい。学校がむかつく理由を言ってください」
「学校の教育方針が勉強ばっかというのがつまんねえ。成績だけで人を判断する。さらに俺は成績が悪いから学校側から煙たがられている。それもうざったい。しかし、本当にうざったいのは俺はもっとエンジョイしたいのにできないことだ。悪いか」
「エンジョイすることは悪くありません。しかし、だからといっていじめが許されるわけではありません。エンジョイするなら他にもあるのではないでしょうか。カラオケに行ったり、技を磨いたり、テレビを見たり、ゲームをしたり、ということでもいいのではないでしょうか」
「・・・それでも、学校の職員どもは遊んでいる暇があったら勉強しろとうるさいんだよ」
「周りの先生を君が気にする必要はありません。エンジョイしてストレスを発散させながら勉強すればいいのではないですか」
「じゃあ、勉強を学校側は強要するけど、何で学校で決められた勉強をしなければならないんだ?」
「それは、自分の人生を社会で生かすためだと思います。もちろん人によっては必要のない分野があると思う人もいますが、勉強をするということは、人間というものを学んでいるといえるでしょう。すべての学問は人間が編み出したものですから、人間を学ぶという事に目覚めれば勉強も面白いと思いますが」
「それでも勉強したいと思わない。先生は表面的なことばっか言っている。さらに、何から何まで我々の生徒はこうでなければいけないとか言われると窮屈で嫌になる。俺たちは学校の名声のために生きているわけではない。自分は自分らしく生きたい」
「それが本音ですか」
「はい」
「じゃあ、ストレスの解消のためにいじめをすることは全く無意味ですね。つまり、君にとってのいじめは、学校という社会に対する反抗ととらえていいわけですね」
「・・・はい」
「それならば、話が早い。近いうちに弁論大会が学内で行われますから、その時に君の気持ちをぶつけてごらんなさい。君に共感を持った生徒も出てくるでしょう」
「わかった。俺は弁論大会で自分の気持ちを言うことにする」
「それでは、君はいじめをやめるということでいいですね」
「はい。いじめをしても心のもやもやが消えるわけではないのでやめます」
E君はいじめをやめるという証明書にサインをし、拇印を押した。
次はD君を呼び出した。
「先生。いきなり呼び出してなんですか」
「君が何人かとつるんで一人の生徒を脅している所を見ましてね」
D君は数秒沈黙し、答えた。
「別に好きでやっているわけではありません。A君に目をつけられてしょうがなくしていただけです。Aの言うことを聞かなければ自分がX君と同じ目にあうからしょうがないんです」
「では、君はA君といつまでもいじめを続けていくつもりですか」
「できればいじめはしたくないんですが」
「ならば君はいじめを絶対やめますね」
D君は弱々しい声で答えた。
「しかし、やめたら今度は自分がいじめられる」
「君はそんなに今の自分が大事なんですか。生き生きとした自分は見たくないんですか」
「見たいですけど無理です」
「いつまで甘えているつもりですか。一人で何百人という人を相手にするわけではありません。ただいじめをやめるだけです。そんなにA君は怖いんですか」
「怖いです」
「勇気がないってことですか」
「そうです。でも、他の人がA君にはむかった人はこれまで見たことがありません」
「いや、君は見たはずですよ。この前X君が君たちの前で勇気を出してA君に『付きまとわないでよ。』といったじゃないですか」
「・・・X君はX君で、自分は自分です」
「背後に私がついていても君はいじめに参加するのを拒否できないのですか」
「でも、A君はなんと言うか」
「D君、いいですか。私はX君からどうしたらいじめられずにすむか聞かれました。私は自分が強くなることだといいました。そして、X君は私との約束どおりに行動しました。だから私も行動しています。実際にX君は生き方を変えました。君はX君みたいに生き方を変えないのですか。変えなかったらいつまでも今の状態が続くんですよ。本当に今のままでいいのですか」
D君は少し黙って、そして答えた。
「先生が自分の背後にいてくれるならいじめには参加しません。X君を見習って自分の生き方を少しでも変えようと思います」
D君はいじめをやめるという証明書に名前を書き拇印を押した。
次はC君を呼び出した。
「なんだよ。先生。急に呼び出して」
「君が他の生徒とつるんで一人の生徒を脅しているのを見ましてね」
「何だ。そのことか。それは先生の勘違いだよ。ふざけてやっていただけでそう見えたんだよ」
「会話も聞きましたが」
「それはあいつが悪いんだ」
「X君が何かしたのですか」
「存在自体がいじめたくなるような奴なんだからしょうがないじゃん」
サンエバーはC君がけろりとした態度で言った言葉に対し、内心怒りを抑えながら話を続けた。
「では、君はX君をいじめるのが趣味というわけですね」
「そういうことになりますね」
「では、君がいじめられたとしたら、どっちが悪いと思いますか」
「当然、俺をいじめたほうが悪い」
「では、いじめは悪いということですね」
C君は内心しまったという感情をもちながら言った。
「・・・・・・それはそうだけど、他に楽しみなんかないからしょうがないんだよ」
「では、楽しみをつくればいいのではないですか。自分が攻撃されたわけでもないのに他人にちょっかいを出すのはその人にとっても迷惑な話ですし、私は納得できません。君はいじめのほかに本当に興味を持っているものは何もないんですか」
「本当はあるけど・・・・・・」
「それならば、君はその他の興味の事に没頭してはどうですか。いじめで周りから迷惑がられたり嫌がられるよりはいいのではありませんか」
「・・・・・・考えてみる」
「では、君はいじめではなく、他の興味のあるものをしてみるということでいいですね」
「・・・はい」
「では、いじめをやめるという証明書にサインと母音をして下さい」
「わかりました」
次はB君を呼び出した。
「先生、急に呼び出して、一体どうしたんだ」
「君が他の人とつるんである生徒を脅しているのを見ましてね」
「それがどうしたっていうんだ。つまらん話なら帰るぞ」
「待ちなさい。とにかく座りなさい。君がいじめの理由を言うまでは帰しません」
「言えばいいんだな」
「そうです」
「単にむかつく。それだけだ。言ったから帰るぞ」
「待ちなさい。その理由を言いなさい」
「うるせえ。余計なことは言いたくないんだよ」
「君は自分が悪いと認めているから言いたくないということですね」
「そうじゃねえよ」
「それなら理由を言ってもらえますか」
「だから、あいつがむかつくからだ」
「なぜ」
「自分だけ何も悩みがないように見えるし、自分の思いどおりに生きているから邪魔したくなるんだよ」
「それは君の見方が違います」
「なに!」
「いいですか。少なくとも君らの存在のおかげでX君は悩んでいますし、X君は他の事もうまくいっていません」
「だから、俺らが人生思い通りにならないことを教えてやっているんだよ」
サンエバーはB君の言葉に怒りを感じながら、
「つまり、君は自分の人生が自分の思い通りにならないから、嫉妬して八つ当たりをしているわけです」
「うるせえよ。先生は自分の思い通りにいっているんだろ」
「いえ、私も思い通りにはなっていません。少なくとも、君がいじめをやめない限りはそうです。それに、X君は自分がどんな目にあっても他人に八つ当たりはしていません。君とは違います。君は八つ当たりしてことが解決できると思いますか」
B君はここではっとしながら小さな声で、
「いいえ」
「当然そう思うでしょう。誰もが自分の人生は自分の思い通りにはならないと思っています。君はどういうふうに思い通りにしたいのかはわかりませんが、とにかく力をつけなさい。君に力があれば自分の思い通りにできる確率が上がります。いじめをやめるなら、私は君が力をつけることに協力しますがどうですか。いじめはやめますか」
「・・・先生の言うことが本当ならばやめたいと思う」
「では、様子見でもかまいません。君がいじめをやめた後、君が壁にぶつかったとき、壁の乗り越え方を一緒に考えましょう。それでいいですね」
B君は黙ってうなずき、いじめはやめるという証明書にサインと拇印を押した。
最後にA君を呼び出した。
「先生、一体何だよ急に呼び出して」
「君が先頭に立って何人かとつるんで一人の生徒を脅しているのを見ましてね」
「ほう。俺に説教する気か」
「君は、いじめをしていることになんとも思わないのですか」
「おい。下手なことを言うと、たとえ先公でも承知しねえぞ」
「どう承知しないのですか。私を殴るということですか。私は君程度の腕力では倒れませんよ。私はアンドロイドですから」
A君は黙った。今まで腕力でねじ伏せてきたからである。しかしA君は、
「俺のやることは俺が決めるんだ。周りに左右されたくないね」
「自分のやることは自分で決めるということは悪くありません。しかし、君が決めたことはいじめなど、他人に迷惑をかけることです。納得がいきません。君に人をいじめたりする権利はありません。」
「うるせえよ。俺に口出しするんじゃねえ」
「なるほど、要するに君は一番上になりたいというわけですね」
「そうだ」
「しかし、君は人の心をつかもうとしない。周りの人は本心から君と付き合っているわけではないとしたらどうします」
「そんな事はありえねえ」
「それではこれを君に見てもらいましょう」
サンエバーは他の人がサインしたいじめをやめるという証明書を見せた。A君は驚き、
「これはマジか」
「本当です。他の人は心の底から君と共に動いているわけではありません」
「畜生。あいつら・・・」
「A君。君はこれからも今までみたいに他人を腕力で抑えつけるつもりですか。それは私が許しません。君は人の上にたちたいのなら肝心なことを忘れています。どうしたら人はついてくるのか。それは力をつけることですが、力は腕力ではありません。人の心をとらえる力です。つまり、簡単に言えば魅力です。君に魅力というものを身につけてほしいと思います。しかし、他人をいじめたり脅し脅したりする人間には魅力はありませんが」
A君は少し間を空けて言った。
「・・・・・・なるほど、・・・・・・魅力か」
「そうです。魅力とは人を引き寄せる力です。それを身につければ君の周りには自然と人が集まるでしょう。私はこれは君にとっては不可能ではないと思います。このことについてどう思いますか」
A君は求めていたものが明快にはっきり言われたのは始めてであったので、逆にすっきりとした様子であった。その表情を見てサンエバーは言った。
「では、君も意味がない無駄ないじめは辞めることにしますね」
「はい」
そして、A君のグループの人達は他の人にいじめはしなくなった。
この話は、サンエバーの生活の一部分である。サンエバーの教師としての行動基準はいかにして一人一人を生かすことであった。
またその他のアンドロイドも活躍を続けていた。
電気、ガス会社に就任したアンドロイドは危険な仕事を任された。原子力発電所はまさにアンドロイドにとって転職であった。
農業では、栽培や、アンドロイドによりさらに新しい品種改良が行われた。品種改良の目的は、量が多く、味がよく、カロリーが低く、栄養的にバランスが良いものを作る事であった。
工場では、機械の点検および新しい機械の開発や、廃棄物の処理までアンドロイドが担当した。
研究員の助手になったアンドロイドは様々な項目を担当していた。老化遺伝子の完全解明、がん細胞の活動の沈静化および衰退させるRNAの開発、自己増殖が可能な環境ホルモンに対する抗体物質の開発、人間の脳に関する研究、汚染物質の分解および無毒化、など挙げればきりがないほどである。
また、研究成果により、薬品会社にも新商品が出てきた。物質の新陳代謝の促進をする薬である。つまり、この薬はダイエットにも効果があり、健康にも良いといったものである。
清掃会社では、アンドロイドはゴミをリサイクルできるものを何百種というものに分別していた。
旅行会社に就任したアンドロイドは、個人の要請にできるだけ応えるという自己満足プランを考案し、採用された。とにかく、安く、楽しく、心地よく、さらに料理はうまいといったものである。
福祉活動にもアンドロイドは進出していた。ホームヘルパーとして、個人で住んでいる老人の家を訪問したり、老人ホームでは、とにかく人と話をしたり、聞いたりしていた。
とにかく、アンドロイドの仕事はたいていは人がやりたがらない仕事、めんどくさい仕事、きつい仕事、危険な仕事、人にはない発想を生かす仕事などで、アンドロイドはそれを忠実に行っていた。また、人の家に住み込み家事を行うこともしていた。
このようなアンドロイドの活躍により、テレビ局がアンドロイドを取材して放映された。その中で人はどういうふうにアンドロイドを思っているかをテレビカメラの前で言っていた。
「アンドロイドって便利ですね。奴隷のように働いてくれますよ」
「アンドロイドが来てからは仕事がだいぶ減りました。これで少し余裕が持てるようになりました」
「最近、アンドロイドにより産業が活発化されました。景気も上がり、アンドロイドさまさまといった感じですね」
「アンドロイドのおかげでうちの家庭に笑いが戻ってきましたよ。アンドロイドはおしゃべりもうまいんですね」
などというのがアンドロイドに対する感想であった。
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