第41話 ロキを倒すプログラム
ロキの所から立ち去った女神シヴァは今、女神ティアの世界を訪ねていた。
もちろんロキの企みについて話をするためだ。
ティアはといえば、相変わらず異世界に似つかわしくないパソコンルームで、シヴァの方をちっとも見る事なく、黙々と作業を続けたていた。
「おいティア。ロキが裏で動いてたぞ」
そう聞いてもティアは振り向きもしないが、背中を向けたまま返事だけ返す。
「知ってるわよ。もう作戦は立ててあるし」
そう言ってやはりカタカタと凄まじい指捌きでパソコンを叩くティア。
「よし!」
どうやら作業が完了したようだ。
満足げにティアはエンターキーをターンと軽快に叩く。すると部屋中にあるモニターに、『プログラムを起動しますか?』とのメッセージがズラリと表示される。
「なんだこれ?」
シヴァは尋ねる。
「ふふふ、ロキを倒す秘策よ」
「もったいぶらずに説明しろよ」
「まぁ慌てなさんなって。あのね、最高神格のロキの戦闘力は確かに凄いけど、実は単純な戦闘に持ち込めれば倒せない相手じゃないのよ。そう、女ゴリラのあんたがいればね!」
「誰がゴリラだ!殺すぞ!おい」
そう言ってティアの頭をパシンと叩くシヴァ。
「いっ、たいわね!あんたと違って私はか弱いんだから手加減しなさいよね!」
「そんな事より続きを話せ」
ティアは渋々話し出す。
「……ロキの最高神格を授かった理由は戦闘力ではなくて、全知全能の神すらも恐れているロキの特殊なスキルなのよ。スキル『デタラメなシナリオ』。これはロキが面白いと思った展開に勝手に因果律が捻じ曲げられるっていうメチャクチャな能力なのよ!」
「な、じゃあ私がロキを戦闘で圧倒したとしても、自分が勝つ方が面白いとあいつが思っただけで、私は絶対に負化されるって事か?」
「そうなるわね。普通に考えればこんな最強の能力を持つロキに勝つ方法はないわ」
「……話は分かった。だがそれとこのプログラムに何の関係があるんだ?」
「ふふふ!聞いて驚きなさい!私が今持っているこのスイッチ!これを押せば3分だけロキの『デタラメなシナリオ』の能力をその空間にいる全員とリンクさせることができるプログラムを発動させられるのよ!」
「プログラム?全員とリンク?よく分からんぞ?具体的にどういう事なんだ?もっと簡単に説明してくれ」
「あんたにも分かるように説明すると、その場にいる全員が一番面白いと思った結末に勝手に因果が捻じ曲がるってわけよ!大丈夫、正義は必ず勝つんだから!」
そう言って自信満々のティアであるが、シヴァはそんな楽観的に考えていいものかと悩んでいる。
「じゃあこうか?ロキに私達が勝つイメージをすり込ませてからそのスイッチを押せばいい感じか?」
「そう!でももちろん私たちも弱気になっちゃ駄目!勝つイメージを持ち続けなきゃ!」
シヴァはティアの干渉プログラムやその勝ち筋の為の発想に素直に感嘆した。
「……お前、ただの気持ち悪いパソコンオタクじゃなかったんだな」
「はぁ?メスゴリラの癖に天才の私になんて口聞くのよ!」
「あ?だから誰がゴリラだって言うんだ!モッペン言ってみろ?ロキとやる前にお前をぶっ飛ばしてやるからな!」
「あーこわいこわい!これだから年増の女神は……」
そうガヤガヤとふたりが言い争う部屋に、スッともう1人誰かが入ってくる。
入って来たのは、そう、女神のランである。
「おねい様たち、随分楽しそうですね」
その声でランに気がついたティアが声をかける。
「あ、ランじゃない。ちょうどいいとこに来た。あんたにも話しておこうと思ってたのよ」
話しかけられたランは、2人を縛りつけるために背中に隠し持っていたロープを握る手にぎゅっと力を入れた。
「良かった、私もおねい様たちに話があるのですわ」
そう言ってランはウフフと不敵に笑った。
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