第40話 勝利のはずが

学校終了後の、日課のトレーニーに勤しんでいる鈴木の元に、突然ヨシヒコから電話が来た。


「はい」


と電話に出る鈴木に、ヨシヒコは高いテンションで一方的に捲し立てた。


「やったよ鈴木くん!なぜか分からないけど編集長が、本格ファンタジーをいきなり推すって言い出して、その担当に僕がつくことになったんだ!」


本格ファンタジーを推す?

それは元々鈴木とヨシヒコが望んでいた事のはずなのだが、何故かなんとも言えないわだかまりを感じる鈴木だった。


「そうすると他の三つのジャンルはどうなるんですか?」


「ん?ああ。基本今後それらのジャンルはランキングを別にして隔離する。こっちでは全くプッシュしない。書籍化もしない。多分廃れていく事になるだろうね。仕方ないよ、所詮、一過性のブームだから」


全て、あの小説達が消える。

確かに、くだらない話ばかりだ、だが……鈴木の頭には本当にそれでいいのか?と疑問符が浮かび始めていた。


「まぁそんなことはいいんだけど、実は本格ファンタジーを推すに当たって、編集長がファンタジー好きの若者に会って話を聞きたいっていうんだよ!鈴木くんの話をしたら、ぜひ会いたいって。申し訳ないけどうちの編集長に会ってくれないかな?」


「話……か……」


そうだ。このわだかまりの正体を知るためには話をするしかない。


鈴木はヨシヒコからの申し出を了承する事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る