第37話 黒幕

大きな神殿の中で、豪勢な椅子に腰掛ける幼なげで中性的な見た目をした神に向かってシヴァは言った。


「今回の件私は降ります」


その神はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべシヴァを煽る。


「そうか、神格を上げなくていいのか?お前はもう随分と歳だろ。今回の出世を逃せば厳しいんじゃないのか?」


今までだったら歳の事を言われたら上司であろうと烈火の如くキレ散らかしていたシヴァだが、その言葉を軽く聞き流した。


「もう出世には興味がないので。それより一つ聞かせてください。あの鈴木という男、あなたの差金ですよね?」


「……なんのことかな?」


「……ふっ。嘘が下手ですね。……最初からあなたが裏で手を回していたなら、どの道私たちに勝ち目はなかったってわけですか。……最低」


最低と言われたその神は、嬉しそうにゾクゾクと体を震わせた後、心底おかしそうに笑った。


「はははは!僕にそんな口を叩けるなんて!君って最高だよ」


「あなたはそういう方ですよね、最高位の神格を持っているのだから、良い加減それ相応の品格を身につけてほしいものです。悪戯の神ロキ。いつか火傷しますよ」


「ははは!近頃退屈でね!たまには火傷もしてみたいかな」


「どうぞご勝手に。一応私は忠告しましたので」


そう言ってシヴァはロキの前から立ち去ろうと踵を返す。


「これからどうするんだい?」


後ろを向いたロキにシヴァは声をかける。

足を止め、後ろを向いたまま答えるシヴァ。


「カインの性根を叩き直して、相撲の同好会を作って、あと休みの日には旅行にでも行きますかね。日本とかいいかもしれませんね」


「優秀な君が、そんなつまらない生活。もったいないな」


そう言って嘆かわしいといった風に首を振るロキ。


「なんとでも言ってください。私の生き方は私が決めますから、では」


そう言ってシヴァはロキの神殿を後にし、今回の女神の戦いから離脱したのであった。

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