第31話 うわっ…私の恋愛偏差値…低すぎ

10時35分、鷹山の彼女と思われる女性が到着した。


化粧の濃い派手な格好をした女性で、おそらく5分程遅刻してきているのだろうが、悪びれる様子は微塵もない。


「今何処とか、ラインうぜーんだけど」


第一声がそれであった。


「いや、待ち合わせ9時だったのに連絡ないから、花子さんに何かあったんじゃないかと心配で……」


5分ではなく、どうやら1時間35分の遅刻だったようだ。


「はっ?遅刻責めてんの?ちっさい男だね」


そう言いながら女はテーブルのボタンを押して店員を呼ぶ。


「そ、そんな責めてないよ」


「あー分かった分かった。チーズケーキとミルクティーね」


女はめんどくさそうに鷹山の言葉を遮り、注文を済ませる。


「そ、それで花子さん、話って……」


「ああ、そうそう。えっと、なんだっけ、私の妹の……えーっと……」


自分の名前を思い出せなくなる、自称山田花子。

鷹山の方が早く妹の名前を思い出す。


「由美ちゃん?妹の由美さん重い病気なんだよね?容態は?」


「あーそうだ、由美だ!由美の入院代が結構高くてね、私風俗で働く事になったから」


「えっ?ちょ、ちょっと待ってよ花子さん」


「しゃーないっしょ。嫌なら別れよ」


別れると言われ、急に弱気になる鷹山。


「わ、別れるのは……嫌だ。いくらかかるの?」


「今いくら持ってる?」


「は、八万くらいかな。今日デートだから多めに……」


「ちょうど八万あればしばらく大丈夫だわ」


「じゃ、じゃあ……」


そう言って鷹山が財布からお金を取り出した途端、花子はひったくるようにそれを奪い取った。


「ありがとー」


そう言って金を自分の財布にしまい、花子は今しがた届いたチーズケーキをバクバクとつついた。


「そ、それで、今日のデートなんだけど……」


「えっ、金無いんでしょ。もう今日はこれで終わりっしょ」


「あっ、カードとかあるし大丈夫だよ」


「ごっめーん、今から妹の入院代振り込みに行かないといけないから」


そう言って帰ろうとする花子を必死で止める鷹山。


「ま、待って!花子さん!結婚の話だけど」


「あーするする。約束通り500万貯まったらな」


「そ、それなんだけど400万まで貯まったんだ!だからそろそろ僕の両親に……」


「えっ、嘘!?マジ?じゃあ次会う時お金持ってきて」


「うん、だから……」


「じゃあね、バイバーイ」


そう一方的に捲し立て花子はさっさと帰ってしまった。


4人も尾行がバレない様に、呆然としている鷹山を残し、さっさと店を出る。


店を出ると、楓はすぐに携帯電話をいじりアプリで何かやっているが、他の三人はさっき聞いた事についてニコニコと話し合った。


「病気妹を持つ彼女」


「結婚の予定」


「お金は病院代と」


「結婚資金」


「これは……」


「うん」


「ええ」


「「「純愛ですね」」」


3人の導き出したとんでもない答えを聞いて、楓は呆れを通り越して蔑みの目線を向けている。


「はっ?あんたら頭湧いてんの?」


「「「えっ!?」」」


3人は本気で驚いている。


「いい話しでしょ!」


「暖かく見守ろうよ!」


「40代独身に1週間前まで陰キャモブ女、それに教室で浮きまくってる変人!あんたら恋愛偏差値低すぎて頭おかしくなったんじゃないの!」


そう言って携帯を見ながら走り去ろうとする楓。


「楓、どこにいくんだ?」


「さっきあの女が帰る時、あいつのバッグに私のGPSタグ仕込んどいたのよ。あの女追いかけるのよ!」


鈴木は走る楓について行く?


「なんでそんな事?」


「決まってんでしょ!あの女ぶっ飛ばして、鷹山さんのお金、取り返すのよ!!」

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