第30話 尾行は女の嗜み
「鷹山くんは、今日都内の某ファミリーレストランで交際中の女性と会うはずなんだ」
そのファミレスに歩いて向かう途中に、ヨシヒコは今回作戦の情報を話した。
今日突然計画に参加することになった楓だけがグイグイ質問を挟む。
「その情報あてになるんですか?」
「彼女についてちょっと聞いたら、鷹山くん嬉しそうにベラベラ話してくれたから、間違いないと思うよ」
「でもそれだけじゃ女遊びにはならなくないですか?ただの彼女じゃ?」
「それが鷹山くん、最近食事はカップ麺ばっかりで、なんか色々な所にお金を借りてるって噂もあって、やっぱり普通のお付き合いとは思えないんだ。もちろんお金の件と彼女は別って可能性もあるけど。でもお金困っているのは間違いない。この件がなくてもちょっと話をしなきゃなって思ってはいたんだ」
「ふーんまぁいいや。それよりファミレス行った時の設定考えときましょ!私鈴木とペアで恋人って設定で!」
鈴木が眉に皺を寄せる。
「おい、勝手に決めるな」
「いや、高校生男女だからこれが普通でしょ!私の事は楓って名前で呼びなさい!私は修(オサム)って呼ぶから!」
「お前と恋人とか、想像もできん。無理だ」
「やだー!修ってばおもしろーい」
どうやら無理やり押し切られそうだ。
しかしそうなると他の2人はどうすればいいのだろうか。
「ちょっと待って、須藤さん。それは良いけど僕ら2人はどうなるの?恋人どうしの中に僕ら2人がいたら変だろ?」
楓は察しが悪いヨシヒコ達に呆れてしまった。
「だから2人、2人のペアでやるのよ!その方が尾行も盗み聞きも成功率あがるでしょ」
意外と正論を言う楓に、作戦の爪が甘かったヨシヒコと鈴木はぐうの音も出ない。
「じゃ、じゃあ僕と笹垣さんは?」
「親子でいいでしょ」
「お、親子って!僕こんな大きい子供がいる歳じゃ……」
「じゃあパパ活って事で!」
「さ、笹垣さん!今から親子って設定でよろしく」
春菜も鈴木とペアが良かったが、鈴木の恋人役をやりたいと言う勇気は無く、そのポジションで我慢する事にした。
そうこうしている内に目的のファミレスに着いた。
「あ、いる。鷹山くんだ。でも女の人はまだ来てない、1人みたいだ」
窓際の席に鷹山が座っていてくれたおかげで、すぐに場所は見つかった。
「OK、じゃああの近くね。修、行くよ!」
楓と鈴木は先陣をきりファミリーレストランに入って行った。
「いらっしゃいませ。お客様何名でしょうか?」
「彼氏と私のふたりー」
「じゃあこちらのお席に……」
「あたし窓際がいいんだけど」
「え、えっと……」
「そこの窓際空いてるよね?あたしあそこがいい」
「か、かしこまりました」
後ろで待機していたヨシヒコと春菜は楓の強引な手法を見て、もはや感心してしまった。
「す、すごい……」
「わ、私はあれ無理です……」
「ぼ、僕も……」
ヨシヒコと春菜は随分離れた位置の席に案内されてしまった。
「ど、どうしよう」
ヨシヒコが困っていると笹垣のラインにメッセージが入った。
カエデ[何やってんのよ、2人とも!]
笹垣春菜[ごめんなさい!]
カエデ[まぁいいわ、今から電話繋ぐから、その音聞いてなさい。そっちの音入らない様にミュートしとくの忘れんじゃないわよ!]
「笹垣さん、須藤さんって本当に尾行初めて?」
「た、たぶん……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます