第28話 初めて見る見るイケメン

カ○カワ訪問を終えた次の日曜日、鈴木は金城目颯斗(キンジョウメハヤト)の伯父、金城目慶彦(キンジョウメヨシヒコ)と待ち合わせをしていた。


学生服の陰キャである鈴木には不似合いなきらびやかな都会の街並み。


しかし今日の鈴木は上手く街並みに溶け込んでいる。


「たぶん、東京の割と高級な店がある場所になるけど、なるべく浮かない格好ってできる?ダメだったら僕が服を貸すから!」


ヨシヒコにそう言われたため、しっかりと変装をしてきている鈴木であった。


財源は不明だが、かなりの額を持ち合わせている鈴木は、ハイブランドで身を固めてきた。


実際に高校生が全身ハイブランドでいたら嫌味であるし、そもそも似合わないものなのだが、それを嫌味と感じさせないオーラが今の鈴木にはあった。

髪型も今日のためにいつもの前髪伸び放題のだらしない髪型ではなく、カリスマ美容師に昨日切ってもらっている。


少々早く待ち合わせ場所に来すぎてしまった鈴木は、周囲の女性たちからジロジロと好奇の眼差しを向けられていた。


「えっ、やば、めっちゃかっこよくない、あの人?」


「声かけてみようかな……」


「モデル?」


「俳優さんじゃない?」


カド○ワ本社に行った日、帰り際ヨシヒコと鈴木は約束した。

それはカクヨムから、チート勇者、スローライフ、悪役令嬢ものを消し去るために協力するというものだった。


その作戦決行初日が今日なのである。


そんな鈴木を建物の影からコソリと見つめる小さな女性がいる。


鈴木のクラスメイト、笹垣春菜(ササガキハルナ)だ。


春菜は悪いとは思いつつも、最近では鈴木の後をつけるのが日課になっていた。

それもこれも鈴木のあの一撃を裏闘技場で見てしまったからだ。

あの時の興奮が抑えられず、鈴木から目が離せない。


「今日は学生服じゃない。何するんだろ、鈴木くん」


鈴木が学生服以外の格好で何をしているのかとても気になった春菜であるが、鈴木がイケメンに変わってしまったということには全く驚いていない春菜。

春菜にとって重要なのは筋肉だけであり、顔なんてものはほとんど意味を成していないのだ。


そんなストーキングの真っ最中の春菜の後ろに最悪の人間が偶然居合わせた。


これまた同じクラスの須藤楓(ストウカエデ)である。


「何やってんの、あんた」


「ひっ!」


突然同じクラスの陽キャに声をかけられ悲鳴寄りの声をあげる。


「いや、クラスでもジメジメしてると思ったけど、プライベートもそれってやばくない?陰でコソコソ何見てんのよ」


春菜が見ていた方向を楓も覗き込む。

するとちょうどヨシヒコが待ち合わせ場所に現れ、鈴木と合流した所だった。


ヨシヒコの方を向いていたため、鈴木の顔は見えない楓であったが、ヨシヒコと一緒にいるおしゃれな若い感じの人ということで楓はピンと来た。


「ははーん、春菜。颯斗の後つけてたのね」


楓はヨシヒコと一緒にいるのがクラス1のイケメン颯斗であると確信した。


「ち、ちが!」


弁解しようとするが、楓は春菜の言葉なんて聞かない。


「あんたに颯斗は渡さないから!あーめっちゃぐーぜーん!」


そう言って楓は二人に近づいていった。


鈴木が楓の方を振り向く。


「えっ!?」


颯斗が遥か彼方に霞んでしまうほどのイケメン!?

楓は顔がカーッと熱くなるのを感じた。


「えっ、颯斗じゃな、えっ、ごめんなさい、私」


イケメン大好きな楓にとって、鈴木の顔面は大大大好物であった。

しかしイケメンすぎてしまい、動揺し言葉がうまく出てこない。

普段教室での高慢な態度はすっかり消えてしまい、しどろもどろになる。


「須藤?どうしてここに?」


初めて見るイケメンが自分の苗字を知っていた事に驚く楓。


「え?私あなたとあったことありましたっけ?」


楓がイケメンにそういうと、イケメンは眉を寄せる。


「お前は何を言っているんだ」


その失礼な態度を見て、まさかと思う楓。


「も、もしかして、アンタ鈴木!?」

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