第23話 ぶりっ子女神

平民になった私は、一応小さな村に届けられ、ほったて小屋のような家を与えられた。しかし私は、そんな家に泊まる事なくすぐに村を飛び出した。


だってこのまま村の中にいたのでは村人に惨殺されるというバッドエンドが待っているのは分かりきっている!


私悪い事してないのに!そんな殺され方は絶対に嫌!



と、死の運命を必死に回避しようとするクラリスをうっとりと空から見つめる怪しい影。


「うふふ、ごめんね、クラリスちゃん♪あなたにはバカ王子に振られてもらうしかなかったのよ」


フリフリの衣装に身を包んだピンク色の髪の女神。

この世界にも当然のように女神は介入していたのだ。


クラリスにはあてが無いわけでも無かった。

生きていた頃のゲームの知識を頼りに、ある城まで行こうと必死になっていたのだ。


このゲームのラスボス、魔王ラティオスのいる城。

ラティオスはこのゲームの隠しキャラであり、裏ボスでもある。


このゲーム基本的には良作なのだが、このラティオスに関してだけはぶっ飛んでおり、レベルをマックスまで上げて、エリクサー的な回復アイテムをフルで所持していても運ゲーで10回に1回勝てるかどうかというめちゃめちゃなバランス設定のクソキャラである。


しかしラティオスの青白い顔、赤い瞳の漆黒の髪、キャラデザだけはすこぶる良い事もあって、無事に人気キャラにはなっていた。


しかもこのラティオス、10ターン以内に倒すという隠し実績付き。隠し実績を解除すると、ラティオスと結婚できるので、天野恵は生きていた頃必死でこのゲームを繰り返した。


どうしてそこまで天野が頑張ったのかと言えば、

「推しだから!」

それのみである。


そう、クラリスはどうせ死ぬのなら推しであるラティオスを一目見て、あわよくば大好きなラティオスに殺してもらおうと考えているのだった。


飲まず食わずで一日彷徨い歩いている悲惨な姿のクラリススカーレットを見てほくそ笑むピンク色の髪の女神の姿。


「すご〜いクラリスちゃん❤︎あんな無様な真似、女神のランちゃんには真似できな〜い♪やっぱりマリアの方も一応転生者にしといて良かった♪マリアにチート能力持たせたら、うまい具合にクラリスちゃんを追い出してくれちゃって。ランちゃんの選んだ世界は乙女ゲームだから、どうしても主人公が強くならないのよねぇ〜。となると、パートナーを強くするしかない。この乙女ゲー最強の隠しキャラ、ラティオスとあなたがくっついてくれたら、ランちゃんの勝ちは決まったも同然、うふ❤︎」


女神のランは神界においてあざとさナンバーワンとも言われていた恐ろしい女神だ。

女神としては実績も無く、若い女神なのだが、お偉いどころの神に媚を売りまくり、今回の3人の女神の戦いの最終枠に滑り込んだのである。


他の女神からは非難轟々であったが、ラン曰く「だったらあなた達も同じ事すれば良いのに?あざとくて何が悪いの?」だそうだ。


「さーて、あとはクラちゃんに私のチート能力、どんな男でも惚れされる洗脳眼力を内緒で授ければ準備完了だわ♪はい付与完了」


ランが勝利を確信したその時だった。


ドォォォーン


と大きな音がバカ王子の城の方からした。


「な、何!?」


城の方を見ると煙が上がっている。


「煙?何々!?こんなのランちゃん聞いてない!」


女神にも予想できない、最強の筋肉ダルマが城の中で現在大暴れ中なのであった。

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