第22話 よくある悪役令嬢のお話

私は鏡に写った自分の姿を見て驚愕した。


「こ、これって!」


美しいブロンドの髪に大きな瞳。

鼻もぺちゃんこな私の鼻ではない。

何!?この美幼女!!


どこからどう見ても美人としか言えない顔立ちをしている。これが私の顔?

確かに顔は美人であるが、その眼光には力強さがあり、人によってはこの顔を


『優しさのかけらもない顔』と評するかもしれない。

鏡の中の私でない私は真紅のドレスを身に纏っている。

私……貴族のお嬢様じゃない?


違う違う!そんなはずない!だって私はごく普通のOL天野恵(32)で、今鏡に写っているのは……これって、これって……。

私の大好きだった乙女ゲームに登場する悪役令嬢!クラリス・スカーレットじゃないのよ!


突然頭がズキンと痛む。

あ!…………そうだった……私、勤めていた会社が超絶ブラックで、それで、地獄のデスマーチがあって……。


そう、そのデスマーチの途中にぶっ倒れた私は死んでしまったんだ……。

つまり私は、一度死んで、スカーレットに転生したってこと?

だとしたら……。


私の人生バッドエンドしかないじゃない!!!!

スカーレットは18歳の誕生日の日に今までの悪行を追及されたのち国外追放になる。


その後スカーレットは追放先の村の農民の怒りを買い殺されてしまうのだ。

そんな終わり方……絶対に許さない!!

私は絶対に、運命を変えて見せる!!


と、そんなこんなで私はあれよあれよの内に18歳の誕生日の日になった。

本来なら隣国の王子であるアーノルド・シュワルツⅢ世王子との結婚発表がなされる予定なのだけれど、その時に私は数々の悪事を断罪され、婚約破棄される。


でも今回は大丈夫!!

私、今回は悪事何て一つもしてないし!

ヒロインのマリアにだって、イジメ一つしてやしない。


というか異世界に来たのが楽しすぎて、異世界探索したり、魔法の練習したりして、それどころではなかったよ!


(大丈夫大丈夫。大丈夫に決まっている!)


あっ、アーノルド王子が現れた!


「今日は私とスカーレットスカーレットの婚約を発表させてもらう大切な場だ」


やった!不幸を回避した!!!!


「婚約発表、そのはずだったが……」


「え!?」


「見損なったぞ!スカーレット!!!」


「アーノルド?何の話?」


「とぼけても無駄だ!」


王子がそう言うと王子の後ろからこの乙女ゲームの主人公であるマリアが顔を出し、その美しい顔を俯かせた。


「マリアにしてきた非道な行為の数々、すべて知っているぞ!」


そんなはずない!私はイジメなんて一切していないし、むしろマリアには関わらないように……。


「うそです!私なにも……」


そう私が叫ぶと、マリアはワッと泣き声をあげ、金切り声でわめきだした。


「スカーレット様は悪くないんです!私が平民の出であるから悪いんです!」


アーノルドは泣いているマリアを抱きしめ、しばらく黙っていたが、こちらを向いてキッと睨みつけてきた。


「私はスカーレットとの婚約を破棄させてもらう!さらにスカーレットを罪人とし、貴族としての権利を、はく奪する!!」


「ま、待ってください!そんな、一方的な!」


私がうろたえていると、兵士たちが集まってきて、私を取り押さえる。

絶望に打ちひしがれる中、私は確かに見た。

あの天使と言われているマリアが、私をチラリと見やり不気味な笑いを浮かべたのを……。


やられた!!

私はあれよあれよという間に身分もお金も失い。

平民として無一文のまま見知らぬ土地に放り出されたのであった。

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