第20話 最強の女神

鈴木のラッシュをくらったカインは絶命した…………はずだった。

しかしカインにスキルと加護を授けた力の女神シヴァが最後の一撃がヒットする直前に防御魔法と最上位の回復魔法をかけたおかげで、なんとか一命だけは取り止められていた。


シヴァはティア同様人から見えない様に姿を消す事ができる。


シヴァは姿を消したままテレパシーで鈴木に語りかける。


「お止めなさい。愚かな人間よ。カインは悪人ではありません。本当のカインは心根の真っ直ぐな善人。そしていずれこの世界を救う勇者なのです」


「いや、どうみてもただのクズだろ」


「…………。そんな事はありません!私がまだ赤子だったカインに加護を授けた時など、この子は言葉も分からないのにニッコリ笑ってくれたのよ!!あんな天使の笑顔ができる子が悪人のわけないのです!」


「いや、帝国追放されてるし、女食い散らかしてるし」


「…………。それは、追放した帝国の方がおかしい。悪です。それにカインは男前なので女が群がってくるのも当然。女の方も喜んでいるのでwin-winですね」


「いや、こいつ洗脳スキル持ってるし、使ってるぞ」


「…………。いえ、うちのカインに限ってそんな事をするはずがありません。何かの間違いです」


「なる程な……」


「なんです、なる程って?」


「こいつがクソ野郎になったのはお前が甘やかしたせいもありそうだな」


「なっ!?あたしはカインちゃまの事を思って!」


「これならティアの方がまだマシだったな」


「ティアですって!?やっぱりあのブリっ子性悪女が私の邪魔をするためにお前をよこしたのか!あのクソ女神!!あいつには先輩を敬う心が欠けてんだよ!」


「いや、ティアと俺は大して関係ないぞ。ただの知り合い」


「嘘つけ!3人の女神が一人ずつそれぞれ人間を選び幸運を与え競わせるのが今回のルール。女神の過度な介入は禁止な筈なのにあの女!スキル以外になんか仕込みやがったな?じゃなきゃ私のカインが負けるなんて、ありえねぇ!!!」


「いや、知らんけど、魔法で守ったお前のは過度な介入にならんの?」


「うっせぇわ!カインに害をなすやつは、ここで排除する!」


そう言ってシヴァは鈴木の前に姿を見せた。

長いブロンドの髪、ティア同様これまた美しい。

しかし若干化粧が濃い気がする。

服装もティアより過激で露出が多い。


「だてに1038年女神やってねぇぞ!ベテラン女神の力、見せてやんよ!」


「その歳でその服装はかなりキツイな」


「黙れ小童!!もう許さん!謝ってももう許さんからな!!」


そう言って、シヴァは地上から30メートル程浮いた所で魔法の詠唱を始める。

この位置では普通の人間はどうにもしようがない。


「風の精霊、大地の精霊。今こそ我に力をかさん!我が名はシヴァ!この悪しき者に聖なる力をもって天罰を……」


集中し詠唱を続けている空中のシヴァの元まで、鈴木はぴょんと軽々飛び跳ねた。


「そんな長い詠唱待てんわ」


そう言って鈴木はシヴァの顔を容赦なく殴りつけた。


「ひぃーんぱでぇーーー!!!!」


シヴァは地面に叩きつけられる。

大きなダメージは無かったシヴァだが、鈴木の一撃のせいでその厚い化粧がボロボロと崩れ落ちてしまっている。


「みぃーたぁーなぁー!!!」


「厚い化粧でダメージを軽減するとは……やるな」


「殺す!お前は絶対に殺す!!」


「詠唱はさせんぞ。呪文使わないで勝てるか?」


「こっちも本当は呪文なんか使いたくねぇんだわ!女神らしくやってやろうとしただけだ!私は力の女神!ただの喧嘩の方が専門だ!言っとくが私はカインの100倍つえぇぞ!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る