第15話 初めての血の味
カインは背中がゾクリとした。
後ろに誰かがいる。
先ほどと違い、後ろの気配は去って行かない。おそらくこちらを向き動かないでいる。
カインが恐る恐る振り向くと、そこには全身黒ずくめの服を着た少年が立っていた。
その異様な姿に、カインは恐怖を感じる。
(スキル鑑定!!)
即座に脅威の測定のため鑑定のスキルを使うカイン。
謎の少年のスキルを覗き見る。
鈴木おさむ 年齢16
HP10
MP0
攻撃力9
防御力7
素早さ8
賢さ6
魅力2
経験人数0
加護無し、スキル無し
カインはこのステータスを見てすぐにほっとした。
とてつもない脅威を感じたと思ったが、それは勘違いだったようだ。
カインは次に自分のステータスを表示し確認した。
カイン 年齢39
HP8600
MP150
攻撃力900
防御力2600
素早さ350
賢さ400
魅力1200
経験人数108
スキル 鉄壁、 HP 体力自動回復、洗脳
チャームetc...
加護 大天使の加護 大地の加護
ふっと思わず笑ってしまう。
あんなステータスの少年に、自分は何を怯えていたのだ。
下手すりゃそこいらの4、5歳の子供以下のステータスだ。
今夜はちょっと自分も飲み過ぎたのかもしれない。
カインは平静を取り戻し、鈴木に自ら話しかける。
「 こんな夜中にどうしたんだい君。 道に迷ったかい?」
「お前を殴りに来た」
何なんだ?こいつ?
「…………と、突然そういうことを言うのは感心しないな」
鈴木は相変わらず生意気な物言いをやめない。
「お前は努力というものを知らないで育ったあまちゃんみたいだ。だから俺が殴って性根を叩き直してやる」
カインのこめかみがぴくぴくと小刻みに動いている。
「わ、私が努力を知らないって、いったい君に何がわかるって言うんだ?」
「加護やスキルとやらで恵まれた生活を送るあまり、勘違いしてしまったんだな、お前は。……そろそろ殴っていいか?」
鈴木のふざけた態度にブチギレ寸前のカインだったが、何度か深呼吸して心落ち着かせる。
「はっはっは!さすがにちょっとおふざけが過ぎるな君は!!」
「お前よりはマシだ。お前以上にふざけた奴などそういない」
「……どうやら人生の先輩として、ちょっと君に教育をしてやる必要がありそうだな」
そう言ってカインは作り笑顔をし、鈴木に言う、
「私を殴りたいんだろ?ほら殴ってみなさい」
カインは鈴木の攻撃を数発交わし、その後軽く痛めつけてやる心づもりであった。
(ははは!これも大人の務め!!暴力は嫌いだが、仕方ない仕方ないw)
「じゃあ遠慮なく」
そう言って鈴木が超高速のパンチを放つ。
「へっ?」
(まずい!!避けられない!!)
カインは咄嗟に『鉄壁』のスキルを使った。
このスキルは5秒間身動きが取れなくなる代わりに、ダメージの90%を無効化すると言う、この世でカインだけが持っているチートスキルであった。
カインの元々のHP、防御力に加えこのスキルである。
おかげでタンカー(盾役)を始めてから今まで、カインは1以上のダメージをくらったことがない。
HP も自動回復のおかげで、生まれてこの方10以上減ったことすらないのだ。
(スキルは間に合った!!これでダメージは零!!)
鈴木のパンチがカインの右ほほにヒットする。
スキルは間違いなく聞いているはずだったが、何がどうなっているのか、カインにじんわりと痛みが走った。
「えっ?何で、痛いーうげぇーぼぉわぁかぁふっ!!」
鈴木のパンチを食らったカインは、森の木々をなぎ倒し吹き飛んでいった。
「一体何だ?これ……口の中が、鉄臭い!」
カインは始めて感じる痛みに、取り乱し、ブチギレ、鈴木を怒鳴りつける。
「親父にもぶたれたことないのに!!」
「そうだな。お前は元は帝国の貴族だもんな。 甘やかされて育ったもんな」
「!?」
「スキルと加護のおかげでお前はやりたい放題に遊び回り、25歳の時に家を追放されたわけだ」
「……どうしてそれを。俺の親は俺の存在を隠したかったはずだ!!どこにも漏れていないはずの話だ!」
「そりゃ知ってるさ。俺は裏設定まで読める『読者』だからな」
「読者?何だそりゃ!お前はどこまで知っている! ?」
「全てだ。 家を追放された後お前が帝国の冒険者として荒稼ぎし、女遊びをしまくったこと。 問題を起こしすぎて帝国からも追放された事。その後帝国と敵対する、アルサルガルド共和国の冒険者になる事。品行方正な冒険者のふりをしていたが、裏では相変わらず遊びまわっていた事。活躍が認められて勇者パーティーに入った事。内緒でパーティーの魔法使いと女僧侶を二股にかけていて、次はプリシラを狙っていた事。それがばれて勇者にパーティーを追い出された事……」
「……なるほど……どういうわけかは知らんが、お前は危険すぎる。ここで殺さなくてはならねえな」
「……やってみろ。一発殴らせてもらったからな、お前も一発殴っていいぞ」
それを聞いてカインは心の中で大声をあげて笑った。
(バカだこいつw あんなクソステータスで俺のパンチを受けたら、骨も残らないぞww……だが……どういう訳かあいつのパンチが俺にダメージを与えた。それは事実だ。あいつの強さには何か秘密がある。 ……まあそれも関係ないか!俺には狂化という、一時的に攻撃力を10倍に上げるスキルがある..ゴーレムすら一撃で破壊するパンチ。 駄目押しにダイヤモンドナックルを装備して殴ってやる!万が一にも、奴はこれ喰らって生きてはいない!!」
「どうした?早く来い」
カインはニヤリと笑みを浮かべた。
「それじゃあ……遠慮なく、殺させてもらうぜ!!!」
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