第11話 女神のびしょ濡れサービスシーン
スライムの数はざっと見て30体。
「まずは、誰でもできそうな簡単な倒し方を試そう」
そう言って鈴木は自らスライムの直近まで移動した。
「スライムの近くまで行って……正拳突き!」
鈴木が目にも留まらぬ速さの突を一放つと、凄まじいスピードのため、衝撃波が発生する。
衝撃波でスライムのジェル状の体は吹き飛び、コアだけになる。
「あとは素早くコアを破壊」
空中に放り出されたコアを叩き割った。
「まずは一匹」
流れるような動き。
同じ手順を使い、鈴木はもう数体スライムを倒す。
「うん、これなら誰にでもできそうだな」
もちろんこんなこと鈴木にしかできるはずがない。
「強敵ってのも大事だが、やっぱりどんなモンスターにも弱点や攻略法ってのは存在しないと。ファンタジーの基本だな」
と一人納得する鈴木。
「敵の攻撃スピードも確かめておくか」
そう言って鈴木は、あえてスライムたちの攻撃の射程に入る。
スライムは待ってましたと言わんばかりに、体の形を変化させ、鈴木を攻撃する。
しかし華麗なステップで鈴木はこれをかわす
「一匹なら余裕」
次は2体のスライムに近寄り、同時に攻撃をさせる。
左右からなかなかのスピードの攻撃が飛んでくる。
しかもスライムの体は変幻自在、体のどこから攻撃が来るか読めやしない。
そのはずなのだが、鈴木はまるでどこから攻撃が来るのか、予め分かっていたかのようにかわしていく。
「2体でも問題ない」
ご苦労さまとでも言うように、鈴木はスライム達に2発パンチを放ち、2体ともスライムを葬る。
「面倒なので沢山いる所に行くか」
鈴木はスライムの1番密集している所に飛び込んだ。
もちろん四方八方からスライムの攻撃が飛んでくる。
一撃食らったら終わりだというのに、鈴木は涼しい顔だ。
「これはちょっと楽しいし、トレーニングにいいかも」
鈴木は1分ほどスライムの群れと戯れ、無傷のままその場を離れた。
「さぁ、次は剣でも使ってみますか」
そう言って、鈴木はイクトが落としていった剣を手に取る。
「剣なんて使ったことないけど」
言葉通り無茶苦茶な構え方でスライムを真一文字に叩き斬る。
スライムは綺麗に二つになる。
「これだとくっついちゃう。だからもっと斬る」
鈴木は今度は縦にスライムを切る。
「もっと」
次は斜め斬り。
「もっともっと」
さらに斜め、もう一度真一文字。
「もっともっともっともっと」
ものすごいスピードで斬撃を繰り出す鈴木。
スライムの体は細切れになり、もちろん中のコアも細かく斬り刻まれてしまった。
「まあこの方法でも倒せると。ちょっと効率は悪いかなじゃあ……」
次に鈴木は、スライムの真っ黒な体に目を凝らした。
「えい」
スライムの体をロングソードで一突き。
どうやら見事体内のコアに突きが命中したらしい
「ピギャー」
という断末魔を上げてスライムはドロドロに溶けてしまった。
「黒だしちょっと見えづらいけど、コアは白いから位置丸わかりだし、これなら簡単だね」
スライムの体は漆黒に近い黒である。もちろん鈴木以外コアの位置など見えるはずがない。
仮に見えたとして、正確にコアを突き抜く突を一体どれほどの人間ができるだろうか。
「でもご老人とか目が不自由な人もいるよね」
問題はそこではない。もう一度言うが誰も見えない。
「でも目をつぶっても……」
そう言って鈴木は今度は目を瞑ったままコアを貫く。
「コアは力の源だから、気配あからさますぎ。目をつぶっていても、位置を感じ取れるよね」
鈴木はゲームかなにかのように、ポンポンリズムよく、スライムのコアを潰していった。もちろん、目をつむったまま……。
気がつけばスライムはもう残り数体になっていた。
「もう終わりか。火はあいつが試してたからな。コアを破壊するのが遅かっただけで、火でも倒せそうだ。じゃあ後は何を試そう」
スライムたちは流石に鈴木が敵うはずのない相手であり、自分達の脅威であると感じたのか、何やら不可解な行動を取り始めた。
一箇所に集まり体を近づけ合っている。
「こんなん作った時設定してたっけ?」
数体いたスライムはみるみるうちに合体し、さらに付近の沼地の水分を吸い上げ、特大のスライムに変化してみせた。
「あの女神勝手にやりやがったな」
鈴木はすぐさま巨大スライムに近寄る。
「えい」
試しに正拳突きをしてみるが、相手の体がでかすぎて、体が離散していかない。
「ロングソードもこれじゃあコアまで届かないな」
大きくなって、動きの方は鈍っているかと思えばそんなことはない。
体が大きいぶん手数は増え、先ほど群れに飛び込んで行った時より厳しい攻撃を繰り出してきた。
どう考えても大ピンチの状況であるはずなのに鈴木は面白そうに笑っている。
「後であの女神褒めてやらなきゃな」
鈴木は巨大スライムから大きく距離をとった。
「仕方ないのでとっておきを使うことにしましょう」
逃げた鈴木を巨大スライムは追いかけどんどん距離を詰める。
どうやら巨大スライムはその体ごと鈴木に体当たするつもりらしい。
身体が当たれば最後、スライムの体に鈴木は取り込まれてしまうだろう。
「ふぅー」
鈴木は大きく息を吸い込み目を瞑った。
もうコンマ1秒でぶつかるというその瞬間、鈴木はカッと目を開いた。
「死ね」
鈴木は目にも留まらぬ速さのパンチを放つ。その衝撃波だけで森全体が揺れた。
鈴木が最後のパンチをはなったころ、ティアはロミオ達を担ぎ、もう数km離れた所まで来ていた。
「ここまで来れば、大丈夫でしょ!」
そう言ってティアは3人を地面に降ろした。
そこで突然、大地がグラリと揺れるのを感じた。
「あら、地震かしら?」
揺れを感じてすぐ、物凄い突風が逃げてきた方から吹き荒れる。
「もう、何なの何なの?あぁ、やだやだ!風でパンツ見える!」
突風は一瞬のこと。すぐに収まったが、ティアは不機嫌だ。
「いやぁーねー。異常気象?嵐でも来るのかしら?」
嵐は来ないが、もっと最悪な物が空から降ってくる。
そんな事ティアは知る由もない。
ティアが雲を見ようと空を見上げたその瞬間だった。
鈴木の一撃で離散し、ここまで飛ばされてきた、巨大スライムの身体だった汚いものが、ティアの顔面にスコールのように降り注ぐ。
顔面や身体はめちゃめちゃに汚れ、我慢できないほどの臭気にも包まれた。
ティアは呆然としながら、顔についたスライムの残骸を手で拭い見つめ、叫んだ。
「……。なんじゃ!こりゃーーあぁ!!!」
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