第5話 スライムを超強化して勇者パーティーをめちゃくちゃにしてみよう♪

ロミオと姫たちは、鈴木と別れたあとは順調に旅を進めていた。


もちろんロミオ一人であれば一瞬で帝国に戻れるのだが、敢えてそれはしないし言いもしない。

何故なら旅の途中でこそ愛は育まれるもの!

というロミオの持論があるからだ。


「あと半分程で帝国に着くはずです」


あと半分。そろそろ姫を抱けるくらいの好感度に引き上げたいところだが、このエリックとかいう騎士が邪魔だし、いかんせん見せ場が少ない。

そんな事を考えていたロミオに、エリックはこの先に出るであろうモンスターについて話す。


「この先はスライムが多く生息する地域になります。気を引き締めて行きましょう」


「スライム?スライムってあの最弱のモンスターだよね。流石に心配いらないよ」


ロミオはエリックを小馬鹿にするように一蹴した。


「確かにスライムは最弱な魔物。だからこそ、油断が足元をすくうということもありましょう。それに数の力と言うのは馬鹿には出来ませんよ」


ルイザ姫も同意するように頷いている。


「ははは。分かったよ」


ロミオはあんな最弱な魔物を恐がっているエリックやルイザが馬鹿みたいに思えた。

まぁだが恐れてくれるならそれはそれでチャンスだ。


いっその事わざとスライムを100体くらい集めて、一気に殺してやろう。

それを見せれば、きっとルイザは俺に惚れて、すんなり股を開くに違いない。

ロミオはゲスな笑みを浮かべた。


ロミオは力はあり、顔もそこそこいいが、本質は鈴木のクラスの嫌われ者森本龍神と似たりよったりのクズ野郎である。


ロミオはワクワクしながらスライムの群生地に足を進めた。



一方その頃、この異世界の別の場所に、また鈴木おさむが降臨していた。


鈴木は空の一点を見つめ言った。


「おい、そこの薄着の女。降りてこい」


空にはもちろん人などいないし、鈴木がそう言っても何も起こらない。

だが鈴木は諦めない。


「きょろきょろしてるな。お前だよお前。お前イクトが言ってた女神とか言うやつだろ?ちょっと降りてこい」


鈴木がそう言うと、ちょっと躊躇ったといった感じの間が空いた後、天から不思議な光が差し込み、美しい、踊り子のような服を来た青髪の美少女が、ゆらりゆらりと降下してきた。


「異世界から来たりし者よ……そなたは我に何を望む。我の名は月の神ティ……」


「御託はいい、早く降りろ」


そう言って鈴木は女神の足を掴み地面に叩きつけた。

女神は顔から地面に突っ込んだ。


「いっっっってぇわ!糞が!!普通女神の足掴むやついるか?おい、ふざけろや!!!」


「それは悪かったな、ティッテェワさん。はい絆創膏」


「ティッテェワ!?ティッテェワ!?」


「うん。ティッテェワって名前だろ、お前」


「ちっっっげぇわ!私が名前言ってる途中に足引っ張るから、ティといってぇわが繋がっただけだろ!私の名前はティアだ!二度と間違うんじゃねぇ!」


「随分口の悪い女神だな」


「ああムカつくなこいつ。もういい!帰るわ」


そう言って飛び去ろうとするティアの付けていたネックレスをねじり引っ張り、鈴木は


「ちょっと待て」


とティアを引き止めた。


「(うぅぅぅぅぅぅぅ)」


ティアは首が閉まって顔を真っ赤にした。鈴木はティアがぐったりしたのを見て、


「よし!」


と言って手を話した。


「ころ……」


「んっ?何?ティアさん」


「殺す気か!小童!!!女神殺すとかお前悪魔か?いや、魔王か?魔王なのか?」


「元気そうで何よりだ、ちょっと聞きたいことがある」


ティアはこの男には何を言っても無駄で、とりあえず穏便に済ますのが一番だろうと感じ、もう黙って話を聞いていることにした。

どうせ加護を1つ2つくれとかそんなだろ。

それらしい下級の加護を適当に与えてやればいい。


「分かりました。鈴木よ!なんなりと申すが良い」


「うん。あのさぁ、この世界さぁ、なんでスライムが弱いの?」


「……はっ?」


予想外の質問であった。


「だから、何でスライムが、最弱モンスターなの?」


何いってんだこいつ?

と思いつつも、答えないとまた酷い目に合いそうなので、ティアは適当に答える事にした。


「あー。だってスライムって弱いものでしょ!ドラ○エとか、あと転ス○だってスライムが弱いから成り立つわけであって……」


「……それおかしいわ……スライム強くしてくれ」


「……ちょっと何言ってるか、分からないです」


「うん、あのさ、元はと言えばスライムは1953年、ジョセフ・ペイン・ブレナンが書いた『沼の怪』が起源だよね。あれのスライム、別に弱くないよね」


「は、はい。そうですね(やっべ。全然知らね)」


「その後クトゥルフ神話で有名なラヴクラフトが物語に書いたショゴスがまぁファンタジー世界のスライムに近い存在なのは当然分かるよね」


「も、もちろんです!(しらねぇぞ、全然)」


「あれも……弱くないよね……」


「は、はい……」


「スライムが弱いのってゲームの世界だよね、この世界ゲームじゃないよね。流行りに流されるのは、おかしいよね?」


「はっ、はぁ……」


「スライム、強くしてくれるよね?」


「そ、それは……ちょっと……」


「……そういえば女神ってまだ殴ったことないな。殴ってみていいかな?」


「わ、わっかりました!今すぐ!強くさせていただきまーす!」


こうして、この世界のスライムが超絶強化されてしまった事を、ロミオ達はまだ知らない。

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