【ー記憶ー】113
二人が恋人同士だと知っている和也はその二人の行動にクスクスとしていた。
それから待合室で午前の外来が終わるまで待たされた雄介。
その間にも待合室にいる患者さん達は減っていく。
とその時、
「桜井さんどうぞー」
そう和也は、ふざけて雄介の事を呼んだらしい。
そして雄介は和也に呼ばれた瞬間には、診察室の方へと向かうのだ。
「おい……コラッ! 和也! 恥ずかしいやろうがっ!」
「ま、いいから、いいから、ほら、完全に戻った望に会いたいんだろ?」
「あ、ああ、まぁ……そうやったな……」
「望も早く雄介に会いたいからって午前中の診察早く終わらせたんだしさ」
「……へ?」
和也は早く雄介に診察室に入るように促す。
雄介は先程までは確かに望に会えるっていうだけで興奮気味だったのだが、今はその熱が完全に冷めてしまっているせいか、今まで自分がとっていた行動が恥ずかしくて仕方がないようだ。
今は完全に興奮状態が冷めてしまっている状態ではなかなか望の元に向かえないでいる。
とりあえず和也に背中を押されて診察室のドアを開ける雄介。
そこにいたのは多分いつもの望だろう。 そう雄介はまだ完全に望の記憶が戻ったという事を知らないのだから、まだまだ疑心暗鬼状態なのかもしれない。
しかし雄介の目の前にいる望は雄介が研修に行く前とは違い仕事をこなしている望だ。 そこに気持ち安心する雄介。 そう雄介が研修に出掛ける前までは望は仕事はしていなかったのだから。 だけど今は診察室の椅子に座ってちゃんと仕事までしている。
だがこう興奮状態が冷めてしまった今では、どう望に話を切り出していいのかを悩んでいるのか、目の前にいる望を直視出来ていないでいる雄介。
雄介とは裏腹に和也の方は雄介の背中を押していて、そのまま診察室にある椅子の方へと座らせるのだった。
やはり急に冷静になってからでは、あまりにも久しぶり過ぎて言葉に出来ないのはなんでなんだろうか。
一方、望の方は相変わらずといった方がいいのであろう。 雄介が来ているのにも関わらずパソコンの画面を見ている。 どうやら望の方も雄介に会う事が久しぶり過ぎて直視出来ないようだ。
このままでは何も先には進まない。
「……ったく、お前等なぁ」
そう和也はその二人の態度に呆れたようなため息を吐き、
「雄介……腕出して……」
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