【ー記憶ー】105

「……せやけど」


 やっぱり今の望は記憶のある時の望とは違いやはり性格まで違うような気がする。


 ハッキリ言って今の望にはどう接したらいいのか。 っていうのが分からない。


 記憶のある望なら下に和也がいようがいまいが喜んで望からのお誘いは断らないのかもしれないのだが、今は記憶のない望だ。


 やはり雄介からしてみたら今の望は望であって望ではない。 全くもって他人にしか思えないのだから雄介の方が完全に今の望から距離を置いているしまっているようだ。


「ほら……」


 雄介は望に手を引かれて望に組み敷かれるようにベッドの上に仰向けにされたのだが、今はこう望を抱こうとも思わない。


 望はその雄介の気持ちを知ってか知らずか雄介のお腹辺りへと跨り雄介の事を見つめている。


「な、望……ホンマ、ちょ、アカンって。 下で和也が待っておるし、ここでイチャイチャな事をしとる場合じゃ、ないんやで」

「さっきからお前そればっかじゃねぇか……今の俺じゃダメなのか?」


 そんな望は雄介の気も知らないでこう色っぽい瞳で雄介の事を誘っているようにも思える。


 その望の行動に今の雄介からしてみたら溜め息しか出てこない。


 本当にどうしたらいいのであろうか。


 今の望に、こうイチャイチャな事をしてもいいのであろうか、それだと記憶のある望に悪い気がする。 いや確かに望は望なのだが、やはり記憶の無い望とこうイチャイチャな事をしてしまうと、気分的に浮気しているような気もして来てしまうのは気のせいだろうか。 だから雄介は今の望に対して抵抗してしまっているという事だろう。


「なぁ?」


 そんな雄介に望は誘うような甘い声を上げ、体を擦り寄せる望。


 雄介はそんな望の行動にどうにか手を出さないように我慢しようとしているのか、瞳をギュッと閉じたままでいるのだが、今の望には、そんな雄介にはおかまいなしのようで雄介の手首を取るとそのまま望の頰へとくっつけるのだ。

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