【ー記憶ー】104
望が言ってる事が正論過ぎて言い返せないでいる雄介。 もうこれ以上望には嘘も言い訳も通用しないと思ったのか、
「あ、せやから……これは……あ、あの……なんていうんか……な?」
だが、やっぱりこう何か言い訳を言おうとしているのか本当の事を言おうとしているのか分からないのだが、なかなかこういう時に限って言葉は出てこないようだ。
雄介は視線を反らし言葉を詰まらせしまっている。
確かにここまで望に自分達の関係を分かってしまっているのなら全然自分達は恋人同士だっていう事を言ってしまってもいいのだが、望の方が、その事を知ってしまうと混乱してしまい、尚更、記憶を戻すのに時間が掛かってしまうのではないかと思い、なかなかそれを言い出せないでいる雄介。
そんな雄介に対して望はこうイタズラっぽい笑みを浮かべて、
「俺は別に構わないんだけど、お前が恋人でもな」
望の口から、そう意外そうな言葉が出てきたた途端、雄介は、
「え? それ、ホンマか!?」
と少し興奮気味に言うのだ。
確かにこの一週間、雄介は記憶の無い望の事で悩んできていた。 だから望がそう言うのならという気持ちはあるのだが。 やはり、そこは複雑な気分でもある。
そう今の望には記憶がない。
そんな望に恋人らしい事をしていいのか? と言うことだ。
「じゃあ、証拠見せてやろうか?」
そう望は言うと雄介の腕を自分の方へと引き寄せ望自ら雄介の唇へと唇を重ねる。
今まで望からこうキスというのはあまりされた事がない雄介。
こう望がいつもの望とは違う感じがするのは気のせいなのであろうか。
望にキスされるのは凄く嬉しいはずなのだが、記憶の無い望は望であって望ではないような気がして、いつものように自分の気持ちが乗らないという感じなのかもしれない。
記憶の無い望には素直になれないでいる雄介。
だから雄介は気を散らせる為に、
「もう、下に行かへんか? 和也待っておるし」
やはりこんな複雑な気持ちのままで望の事を抱くという行為が出来ないとでも思ったのか今の望の言葉に、ニュアンス的にやんわりと断わりを入れる雄介。
ハッキリ言って雄介はどんな望でも好きである。
だけど記憶の無い望はまるで他人のように思えて手を出せないでいるだけだ。
「何だよ……お前って恋人に冷たくねぇ? 人がせっかくお前が恋人だっていうから誘ってるのにさ」
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