【ー記憶ー】102

 いつの間にか変に仲良くなった和也と雄介は何故か呼吸までもが合っているのか、どちらかが火の担当をしていると片方は切る担当へと回り夕食のおかずを作り上げて行く。


「よっしゃ! 出来たな!」

「おう! ほら、望に渡して来いよ。 あー、でも、望に早く家に慣れてもらった方がいいかぁ。 じゃ、あれだなぁ、望をここに呼んで皆で食べようぜ」

「せやな。 ほな、俺、望んこと呼んで来るわぁ」

「ああ、よろしく」


 そう言うと雄介は二階にある望の部屋に向かいノックをすると望の部屋の中へと入る。


「入んで、皆と下で食事せぇへんか?」


 そう満面な笑顔で再び雄介は望の部屋へと入るのだが、望の部屋に入ると声を少し震わせる。


「の、望? そ、それ何見てるん?」

「ん?  ああ! これか? 自分の携帯。 さっきさぁ、さっき着てた服のポケットに入ってたんだよ。 それを見てたらさ、あることに気付いちまったんだよなぁ。 そう、俺とお前は従兄弟同士ではないことにな!」

「はぁ!?」


 望は急にそんな事を言い出し、突然の事過ぎて何を言っているのか訳の分からなくなっている雄介。 少なくとも雄介が口を滑らせて望と雄介の関係は従兄弟同士ではないと言ってはいない筈だ。


 よくよく望の方に視線を向けて見てみると、望はあの日スプリンクラーで水没してしまい、データが全部吹っ飛んだと思われていた携帯を開いて見ていた。


「証拠、見せてやろうか?」


 望は手にしていた自分の携帯を雄介へと投げ渡すのだ。

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