【ー記憶ー】101
雄介の行動というのは従兄弟以上の世話を望にしてきてしまっていたという事になるのであろう。
それは雄介がどうしても望に近付きたくて最終的に従兄弟という答えを導き出してしまったのだから。 でも雄介の行動は望が今指摘したように親か恋人みたいな世話の焼き方だった。
それが今回完全に裏目に出てしまったという事だ。
きっと雄介の中では望と自分の関係は恋人の関係のままでいたかったというのが強すぎて従兄弟以上の事をしてしまっていたのかもしれない。
「ま、まぁ、とりあえず、俺の方は望と従兄弟だし……」
だが、その事を指摘されても、まだ望と雄介の関係は従兄弟だという事を言い張るようだ。
「ま、ご飯作ってくるから、まぁ、望はゆっくりしててな」
そう言うと雄介は足早に望の部屋を出て行く。 やはり望にそこを指摘されてしまい気まずくなったからであろう。
そして部屋を出た早々に雄介は大きなため息を漏らすのだ。
いつまで雄介は望との関係を従兄弟同士として、いなければならないのであろうか。 雄介としては望との関係は恋人同士になりたいと思っているのかもしれない。
でも今の望は記憶のない望。
だから、いきなり男の恋人がいたなんて事を本人に言える訳もない。 早く望に自分達は恋人関係なんだという事を言って雄介は望の事を抱きしめたい触れたいとでも思っているのであろう。
でも今は従兄弟の関係では、それさえも叶わないでいる。
ついこの間まで望と過ごして幸せな気分だったのに今は望が記憶を失くしてしまい雄介と望の関係は従兄弟のままでいて、正確には完全な他人なのだから抱きしめる事さえも触れる事さえも出来ない関係になってしまっている。
雄介が下に向かう頃には和也が夕飯の準備を始めていた。
「どうだったんだ? 望の様子」
「いつもの望と変わらへんかったで!」
そういう雄介の方はいつもの笑顔で答えるのだが和也からしてみたら今の雄介は空元気でしかないように思える。
「ほな、俺も料理の準備するな」
無理やり元気なフリをしているのか雄介は右腕を上げるとガッツポーズを作り和也と料理の準備を始めるのだ。
「おう! サンキュー!」
そんな雄介の様子に気付いていた和也だったのだが、一緒に手伝ってくれるという雄介の好意に甘え一緒に料理をする二人。
こういう事だって、この二人の間には今までなかった事だ。
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