【ー記憶ー】84

 望の検査に携わった医師によると一酸化炭素中毒で一旦、呼吸停止に陥った望。 その時に脳に一時的に酸素が行き届かなくなって記憶に障害が出てしまったという事のようだ。


 人間は呼吸が停止してしまってから五分がボーダラインとされている。 それを過ぎて意識が回復したとしても脳に障害が残る事がある。


 望はその一つである記憶喪失になってしまっていたという事だろう。


 望は検査を終えると頭というのか、その記憶喪失以外には外傷的にも問題がないようで一般病棟へと移される。


 和也は望の病室へと点滴を持って入る。 だが、まだ望が目を覚ました訳でもなく記憶が戻った訳でもない。 ただただ呼吸器を付けて寝ているだけだ。 これが、ただ怪我をして入院しているだけなら、いつものように望の事を世話すればいいのだけなのだが、今回の入院に関しては記憶がない望なのだから、これからどう望に接しって行ったらいいのか、というのを悩む所なのかもしれない。


 今まで知り合いがこんな状態になった事がない。 だからなのか本当にどうしたらいいのかが分からないのが本音という所だろう。


 和也は雄介に既に望は記憶喪失である事を聞いた時から、これから望にどう接して行くべきかという事を考えていた。


 いつもにように友達という関係で接していくべきなのであろうか。 それとも看護師と患者という関係で接するべきなのか。


 和也だって雄介と同じように望が記憶喪失になってしまって動揺してない訳がない。


 友達だからこそ、そこについては本当に悩んでいる所だ。

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