【ー記憶ー】42

 そして、この前の時は二人の勘違いもあってまともに話す事が出来なかったのだから、こんな雄介の姿は見れなかったという事だ。 きっと今の雄介が素なのであろう。


「望は何かないんか?」

「流石にねぇな」

「そっか……まぁ、仕事柄しょうがないよな」

「ああ、まぁな」

「ふぅー、お腹もいっぱいになったな」

「俺もだぜ。 今日はありがとうな」

「全然、そんな事に気にしてへんから」

「よいっしょ! 後は俺がやっとくし今日はもう帰れよ。 明日も仕事あるんだろ?」

「ああ、まぁ……」


 雄介は自分が食べ終えた食器を流し台へと置くと、


「ほな、また明後日な」


 そう言うと、雄介は立ち上がりかけていた望の事を抱き締め唇を重ねる。


「これで、俺の温もり忘れんなや」

「……ぁ……温もりって」


 望が口にしていた言葉を何度も繰り返し使ってくれている雄介。


 望の方はそれを使われると恥ずかしいのだが、どうやら雄介の方はその言葉を何度も使う所からすると気に入ってくれてるようだ。


 雄介が望から離れると望は雄介の事を玄関まで送りに行く。


「また、明後日な」


 そう言う雄介に笑みを浮かべると望は雄介の事を見送る。


 雄介が帰宅してしまった後、部屋は明かりが消えてしまったかのように気持ち暗くなったような気がするのは気のせいであろうか。 そして誰もいない部屋というのは本当に静かだ。


 望はそんな中リビングで一人洗い物を始めるのだ。

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