【ー記憶ー】41

「ん……だから……いいって……」


 望はそう言うものの、こうやって人にやってもらう事が気持ちよかったのか、そのまま何も言わずに雄介にされるがままでいるようだ。


「こん位しっかり拭いてぇな」

「あ、ああ……ありがとう」


 今また新たに雄介に関して発見が出来たようだ。


 どうやら雄介は世話好きなのかもしれない。


「ほな、飯が冷めないうちに食おうや」

「ああ、そうだな。 いただきます」


 なんて、ありきたりな事を言ったのも久しぶりのような気がする。


 こうして誰かと食べる事も手料理を食べる事も本当に久しぶりの望。 こう誰かと一緒に食事をするというのは一人食べている時よりも明るくて温かさえも感じられるのは気のせいであろうか。


 食事の時には雄介が中心になって話をしてくれる。 望の方は特に仕事上面白い話というのはないのだが、雄介の場合にはこう同僚と話した事を面白おかしく話をしてくれるのだから本当に雄介といる時間が楽しく思えて来ているようだ。


 望は雄介が話している事に対して笑っていた。


 あまり人前では笑わない望。 だが雄介の前ではこんなにも笑えるなんて思ってなかった事なのかもしれない。


 そして今日はもう一つ雄介の事で発見が出来た。


 雄介は話も上手だという事だ。


 そう雄介が退院してから、こうゆっくりとした時の中で会話を出来たのは初めてなのだから気付けた事なんだろう。


 そう病院内では雄介の方だって大人しくしていなければならないのだから気持ち的には静かにしていたのだろうが、今は完全に二人だけの世界なのだから、そこについては遠慮なんかいらないという所だからだろう。 望の方だって雄介が病院に入院している間というのは仕事中なのだから、勿論、雄介とゆっくり喋る事なんか出来ずにいたのだから本当に今日まともに雄介と初めて会話をする事が出来たのかもしれない。

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