【ー記憶ー】15

 今の二人の間には会話もなくただただ食事を黙々と食べる音と今はもうテレビの音しか聞こえて来ない状態になってしまっていた。


 今日は久しぶりの再会で会話だって盛り上がってたのかもしれない筈だっただろう。 だが、さっきの事で二人の間に亀裂が入ってしまったのだから静かな空間となってしまったのかもしれない。


 さっき望が雄介に抱き締める事を拒まなかったら?


 きっと二人の間には会話があったのであろうか?


 その一瞬で言葉でも人間というのは誤解を生む事もある。 まだ恋人同士になったばっかりで相手の事をちゃんと理解してないのだから尚更なのかもしれない。


 


 その後も二人の間には会話がなく、望はとりあえず雄介の事を客間へと案内すると、望はお風呂に入ってから自分の部屋で横になるのだ。




 次の朝。


 望は起きて階下へと向かうと、机の上には手紙が置いてあった。


 望はその手紙を手にしながらソファへと腰を下ろす。


『今日はもうスマンな。 ちょっと急な用事が入ったし、早めに帰らせてもらうわぁ。 雄介』


 とそこにはそう書かれていた。


 望はそれを読むとぐしゃぐしゃと丸め近くにあるゴミ箱の方へと投げるのだが、その紙はゴミ箱から外れ床へと落ちてしまうのだ。


 望自身も雄介が帰ってしまったという事でやる気も何もなくなってしまったのか、その床に落ちてしまった手紙さえも拾わず頭をテーブルへとうっつぶせたまま大きなため息を漏らしてしまう。

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