【ー記憶ー】11

 せっかく、望とは久しぶりに会えた筈なのに、望からそんな冷たい言葉に雄介の方は離れて行ってしまう。 きっと雄介の素直な性格がそうしてしまったのであろう。


「分かったわぁ……」


 今にも消え入りそうな声で答えると、雄介の方はさっき望の言われた通りにお風呂場へと向かうのだ。


 急にお風呂に行くと、言ってしまった雄介に、望は慌てたように、


「あ! 風呂場は出て左だからなっ!」


 望は雄介に向かいそう言うのだが、既に雄介からの返事はなかった事から雄介は望の言葉を聞かずに行ってしまったのか、それともちゃんと聞いていたのか何も答えずに行ってしまっていた。


 そこに首を傾げながらも望は今買って来た商品を冷蔵庫の中へとしまって行く。


 望はとりあえず買って来た商品をしまうと軽く息を吐き、ソファへと腰を下ろすと、雄介がお風呂から上がって来るのをテレビでも見ながら待っていたのだが、望が暫くテレビを見ていても雄介がお風呂から上がって来る気配がない。


 確かに望は先程雄介に『シャワー浴びて来いよ』とは言った筈なのだが、未だに雄介が出てくる気配はない。 シャワーだけなら少なくとも十分から十五分位で出てこれるだろう。 それに雄介の場合、短髪でもあるのだからもっと早いのかもしれないのだが、もうかれこれ一時間は出てきてないような気がする。


 だからと言って付き合い始めたばかりの二人にとって様子を見に行くのには結構勇気がいる事だ。

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