第71話


まぁ、魔導知能が操作する分体に装備させるための武器が大量に必要だし。

当分、死蔵する武器ってのは出ないだろう。

分体に武器を持たせる場合。一度に精密な操作で動かせる数は減るみたいだけど。

数が減っても素手よりは、武器を持っていた方が戦力になるだろう。

無手を極めてる人なら、話は違うたろうけど。

そんなレベルじゃないしな。


「魔物の数が少なくて、楽ではあるけど。外の虫地獄を経験した後だと、なんか物足りない」


沙希ってそんな戦闘狂だったっけ?

確かにレベル上げをするなら、あれも悪くなかったけど。

次々と虫系の魔物が集まってくるから戦闘が途切れなくて、体力的には勿論、精神的にも疲れるからな。

雑魚だけじゃなくて、普通に強いのも混ざるし。

レベルアップの速度は相当ゆっくりになるだろうけど。


「とにかく魔物も倒したし、そろそろ移動しようか」


いつまでここに突っ立ってても魔物とエンカウントできないからね。


「オイオイマジかよ……」


移動を始めようとした瞬間。

ダンジョンのスタート地点の方から竜の圧を感じる。


どう考えても。俺たちを追いかけてダンジョンに入ってきたってことだよね。

逃げるなんて不可能だし。

ここで待ち構えるしかないか。



「勝吾。戦闘になると思う?」


「こっちの出方次第じゃない?」


今のところ竜の発する圧から殺気を感じないし。

今、感じてる圧は竜が生きているだけで自然と発せられるものなんだろう。


竜がこちらを威圧しようと圧を発している訳では無い。


神もそんな感じだったし。


「恐らく、竜が態々、ダンジョンまで追いかけてきてまで、気になることがあるんだろな。俺たちに」


「大人しく、それに答えれば直ぐに命を取られない可能性があると……」


俺は死ぬかも知れないけど、最終手段が有るから。沙希とアレーネはそれで守るつもりだけど。

アレは神代ルーン魔法の比じゃない反動があるからな。


竜であろうと殺すことはできるけど。

今の状態でアレを使ったら。俺は魂ごと消滅だろうな。

オーディンと戦った時は、神々の補助があったから使えたけど。

神々の補助なしで、全て自分で制御するとなると、それぐらいは覚悟する必要があるだろう。

正直、世界ごと消滅みたいな事になる可能性も充分あると俺は思う。


「そんなに警戒しなくても。殺しちゃ私の目的が達成できないから殺さないわよ?」


さっきまでスタート地点付近にいたはずなんだけどな。


真横で当然のように会話に混ざってくる。深紅のドレスを身に着けたお姉さん。


考えるまでもなく、人の姿に化けた竜だ。


「目的についてお聞きしても?」


「ただ教えて欲しいだけよ。私の知らな技術について。貴方たちの装備、私の知らない技術を使って強化されてるみたいだし。スキルの魔法とは違う魔法を使ってるようだから。詳しい話を聞いてみたいのよ。最近。異世界から勇者が召喚されたとか言う国があったけど。そこの2人はその関係者でしょ?」


何かもう殆どバレてるじゃん。

やっぱり恐ろしいね竜って。

それにしても、俺が想像している以上に目の前の竜は人と関わっている気がする。

いくら異世界から来た勇者の話が、すごい速度で広まってたとしても。

人が一人もいないような山奥とかそんな感じの場所で暮らしてたら、勇者の情報なんて知ることは出来ないだろう。


つまり、この竜は人のそう言った情報が流れてくる場所で普段過ごしているという事だ。


「教えることは勿論できますが。ご自身で使えるかは、分かりませんよ?」


この世界の技術じゃないし。


「教えられて、スキルを習得できるものじゃないんだから。寧ろ使えなくて当然だと思うけど……もしかして、魔法も装備を強化している技術も、異世界人の為に神々が作った新しいスキルじゃないの?」


あ〜竜からしたらそう言う認識だったのか……

竜からしたら、新しい技術を習得したいんんじゃなくて、自分の知らないことを知りたかっただけと……

これは余計なこと言ってしまったな。

とは言えここまで言ってしまった以上。

正直に言うしかないか。

良い言い訳思い浮かばないし。


「ルーン魔法と刻印術、どちらも地球の技術ですから。スキル化されてません。なので、こちらの世界の生命に教えれば、誰でも使えるようになる可能性も有りますし。逆に誰も使うことが、できない可能性も有ります。

後は、教えることでスキルの重要性が減少して神々と敵対する可能性もあるかなと」


レベルアップが教会に行かないと出来なかったりと、この世界の神々は信仰を集めることにかなり熱心な気がするからね。

スキルを必要としないルーン魔法や刻印術を広めようとしたら、神と敵対することになるかもしれない。


「そういう事なら。私に教えるだけなら問題ないわ。これでも、神々のお願いを何度も聞いてるからそれぐらいの我儘許されるし。神々には私から直接許可をとるから。そしたら教えてくれる?」


なんか想像以上に凄い竜だったらしい。


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読んでいただき有難うございます。

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